TRAPPIST-1d

TRAPPIST-1d

TRAPPIST-1dは、地球から約39.4光年離れた位置にあるみずがめ座方向の太陽系外惑星です。非常に小型で低温な赤色矮星である主星TRAPPIST-1の周囲を公転しており、岩石質の地球型惑星と考えられています。この惑星は、主星のハビタブルゾーン（表面に液体の水が存在しうる領域）の内縁に近い軌道を回っています。

発見の歴史

TRAPPIST-1dの発見は、TRAPPIST-1系の他の惑星と同様に複雑な道のりをたどりました。ベルギーのリエージュ大学を中心とする研究チームは、チリのTRAPPIST望遠鏡を用いたトランジット法による観測で、2016年にb、cと共に「d」を含む3つの惑星候補を発見したと報告しました。しかし、初期の観測データは複数の惑星によるトランジット信号が混じり合っており、「d」として報告されたデータには、実際には後に特定された別の惑星（eとg）のトランジットが混ざり込んでいたことが判明しました。現在「TRAPPIST-1d」として知られる惑星は、2016年9月から実施されたスピッツァー宇宙望遠鏡による追加の精密観測データに基づいて、2017年2月22日に改めてその存在と性質が発表されたものです。初期のTRAPPIST望遠鏡やウィリアム・ハーシェル望遠鏡による観測の中に、当時は惑星によるトランジットと断定できなかった周期的な減光がいくつか見られましたが、スピッツァーによる確定後、これらがTRAPPIST-1dを含む複数の惑星のトランジットであったことが後から確認されました。

物理的性質

TRAPPIST-1dは、地球の約0.784倍の半径を持つ、比較的コンパクトな惑星です。このサイズは地球と火星の中間にあたり、TRAPPIST-1系内で既知の惑星の中ではTRAPPIST-1hに次いで2番目に小さい惑星です。質量については、2017年2月の発表時点では地球の約0.41倍と推定されていましたが、その後の詳細な観測データの解析により、2018年2月には地球の約0.297倍へと改訂されました。これは、TRAPPIST-1系で最も質量の小さい惑星となります。質量と半径がより高精度で決定されたことで、密度や表面重力といった重要な物理量も詳しく求められるようになりました。TRAPPIST-1dの密度は地球の約0.616倍、表面の重力加速度は地球の約0.483倍と算出されています。これらの比較的低い密度や重力の値は、この惑星が水や氷、あるいは厚い大気など、揮発性物質を相当量含んでいる可能性を示唆しています。なお、2016年の初期報告でTRAPPIST-1dのものとされた物理量（半径1.17倍、質量1.60倍など）は、実際には複数の惑星のデータが混ざっていたために算出された数値であり、現在のTRAPPIST-1dの真の性質を表すものではありません。

軌道と環境

TRAPPIST-1dは、主星TRAPPIST-1から平均約0.0223天文単位（およそ333万キロメートル）という非常に近い距離を周回しています。その公転周期は約4.05日と、太陽系で太陽に最も近い水星（公転周期約88日、距離約0.387天文単位）と比べても格段に短いものです。しかし、主星TRAPPIST-1は木星と同程度のサイズしかない非常に小型で低温な赤色矮星であるため、この近距離の軌道でも、TRAPPIST-1dは主星のハビタブルゾーン内に位置していると考えられています。推定される惑星の表面温度は約282ケルビン（約9℃）であり、これは地球の平均気温に匹敵する値です。発見初期の軌道推定はデータ混同によるものでしたが、偶然にもその最小値は現在の正確な値に近く、当時からハビタブルゾーン内に位置する可能性が指摘されていました。これらの条件から、TRAPPIST-1dは居住可能性という点で注目を集めており、地球との組成の類似性を示す地球類似性指標（ESI）の値は、2018年3月時点で既知の太陽系外惑星の中で最も高い0.90という非常に高い値を示しています。これは、液体の水の存在や生命にとって比較的良好な環境が実現している可能性が他の多くの系外惑星よりも高いことを意味します。

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