True (L'Arc〜en〜Cielのアルバム)

L'Arc〜en〜Ciel 4thアルバム『True』解説

1996年12月12日にリリースされたL'Arc〜en〜Cielの4枚目のオリジナルアルバム『True』は、前作『heavenly』から約1年3ヶ月ぶりの作品です。本作は、先行シングルとしてリリースされた「風にきえないで」「flower」「Lies and Truth」を含む、全10曲を収録しています。

アルバム制作の背景

前作『heavenly』の制作後、バンドはライブ活動を中心に展開。本作では、楽曲制作に十分な時間をかけ、アレンジを練り込むことに重点を置きました。hydeは「1996年をアルバム制作の年にしたい」と語っており、1996年4月からのライブツアー終了後、6月頃から制作準備を開始しました。

音楽性の変化

本作では、メロディを重視した楽曲制作に取り組みました。kenは「以前はインストで練りこんでいたが、今回は100％メロディ優先」と述べています。また、キーボードでの作曲が増え、ギターのアプローチも変化。コード感をキーボードに任せることで、よりギターらしいプレイを追求しました。この変化は、よりポップな音楽を追求するための試みでした。kenは、ポップミュージックの本質について、「特殊なものが整合性を持った時にポップになる」と語っています。

セールスへの意識

前2作のセールスが伸び悩んだことを受け、本作では大衆に届くポップスを意識。kenは「売れない声が聞こえた時、一番曲を書いていた。曲が悪いんだろうと思っていた」と述懐しています。hydeも「やりたいことがあっても、売れないとできない」と語り、セールスを意識した制作への転換を明かしました。

レコーディング

録音は1996年7月から山中湖のスタジオで合宿形式で行われました。初期の曲出し会では、「風にきえないで」「Lies and Truth」「the Fourth Avenue Café」のデモ音源が提出されました。先行して「風にきえないで」がレコーディングされ、他の楽曲は合宿で完成しました。

作曲方法の変化

本作では、作曲者が歌のメロディも制作する形に変更。従来のL'Arc〜en〜Cielでは、コード進行やオケを作った者に作曲クレジットが与えられ、歌メロはhydeが担当していましたが、「風にきえないで」を制作したtetsuyaが歌メロも作ったことで、この方式が確立しました。kenは「歌にまとわりつくようなアレンジをしたかった」と語っています。

アレンジャーの起用

本作では、6人の共同プロデューサー兼アレンジャーを起用。tetsuyaは「プロデューサーは絶対に必要」と考えており、外部の意見を取り入れることで楽曲のクオリティを高めることを目指しました。岡野ハジメは本作で初めてL'Arc〜en〜Cielの作品に参加。sakuraは岡野との作業で「見える景色が変わった」と語っています。

音楽性の多様化

音楽性は、1980年代のニュー・ウェイヴやゴシックロックをベースに、ストリングス、ホーン、アコースティックギターなどを導入。打ち込みも積極的に用いられました。「Caress of Venus」ではシーケンサーソフトが多用され、「Lies and Truth」ではsakuraがエレクトリックドラムを導入。ネオアコ、ホワイトソウル、ハウスなど様々なジャンルの要素を取り入れ、楽曲の幅を広げました。

歌詞の変化

hydeの歌詞も変化。以前は苦しみながら書いていた歌詞を、今回は遊び心を持って書けるようになったと語っています。ヴォーカルスタイルも変化し、より芯のある歌声に。hydeは「武道館のライブビデオを見て、理想のヴォーカリストに近づきたかった」と語っています。

リスナーの反応

マスに届くポップスを意識した楽曲制作は、インディーズ時代からのリスナーから不満の声も上がりましたが、tetsuyaは「価値観が合わない」とコメント。kenはレコード会社のスタッフから「売れない」と言われたエピソードを明かしつつも、「見てろよ」と思っていたと述べています。

チャート成績と評価

結果として、オリコン週間アルバムチャートで初登場2位を獲得し、発売6週目で初の首位を獲得。その後110週にわたりチャートインし続け、初のミリオンセラーを達成しました。音楽ライターからは「ポピュラリティとオリジナリティを確立した」と評価され、ロックバンドSiMのSHOW-HATEは「人間味を感じる」とコメント。音楽ジャーナリストの沢田太陽は、本作を「試行錯誤期」と分類し、多様な音楽性を分析しています。

アルバムタイトル

アルバムタイトルは、作詞を多く手掛けたhydeが命名。「真実」を意味する言葉を選んだ理由について、hydeは「嘘も全部ひっくるめて、これが＜真実＞」と説明。メンバー全員が強い意気込みを持って制作に臨みました。

ライブツアー

アルバムリリース前には「Kiss me deadly heavenly '96」ツアーを実施。アルバム収録曲を先行披露し、パートチェンジバンド「D'ARK〜EN〜CIEL」も登場しました。その後、「BIG CITY NIGHTS ROUND AROUND '96」ツアーを開催し、アルバムリリース後には「Carnival of True Eve」ライブと「CONCERT TOUR '96〜'97 Carnival of True」ツアーを実施。大規模な会場での公演も行われました。しかし、ドラマーsakuraの逮捕により、活動は一時休止となりました。

リリース形態

フィジカルはCDとMDで発売。2011年には音楽ダウンロードサービスで配信を開始し、2012年にはiTunes Storeでも配信。2014年にはハイレゾ音源、2019年にはサブスク配信も開始されました。2022年には、リマスター盤が収録されたボックスセットが発売されています。

収録曲解説

1. Fare Well

旅立ちを描いたバラード。ピアノとストリングスが印象的。kenはデモの段階でピアノのフレーズを打ち込み、ギターソロではディレイをかけずに音の切れ味を強調。女性奏者によるチェロとヴァイオリンを導入しました。ライブではストリングスを強調したバージョンも披露。

2. Caress of Venus

打ち込みを導入したダンサブルな16ビートの楽曲。kenが元々8ビートだった曲を16ビートに変更。tetsuyaはベースのトレブルを絞って演奏。仮テイクのギターとベースが本テイクとして採用。ライブで頻繁に演奏される楽曲で、2006年にはMステでも披露。

3. Round and Round

スカのリズムを取り入れたロックナンバー。ツアータイトルをもとに命名。hydeのヴォーカルはラジオボイス風に処理。kenはギターで勢いを表現。Aメロではウォーキングベースを導入。歌詞は人間社会を皮肉ったもの。2020年のツアーで約22年ぶりに演奏されました。P'UNK〜EN〜CIELとしてセルフカバーもしています。

4. flower

スウェーデンポップス風の軽快な楽曲。アコースティックギターとブルースハープが印象的。hydeはサビの制作に苦労し、kenの裏メロが曲を良くしたと述べています。ライブではhydeがブルースハープを客席に投げ入れるパフォーマンスが恒例。sakuraは2種類のバスドラムを踏み分けました。間奏部分はハーフテンポに変化。

5. "good-morning Hide"

ゴシックな雰囲気を持つロックナンバー。岡野ハジメがプロデュース。フィードバックノイズが特徴。sakuraが作詞を手掛けた唯一のL'Arc〜en〜Ciel名義の楽曲。歌詞は全英語詞で、日本語訳も付属しています。

6. the Fourth Avenue Café

ポップでメロディアスなナンバー。東京スカパラダイスオーケストラのホーンセクションが参加。作詞はhydeで、歌詞の舞台はカフェ「Yonchome Cafe」。約10年後にシングルとしてリリース。

7. Lies and Truth ("True" mix)

ストリングスを大々的に導入した哀愁漂う楽曲。kenはメロディアスなサビを意識。フィラデルフィアソウルのようなストリングスアレンジが特徴。sakuraはレコーディングでエレドラを使用。エンディングにメロディが追加。

8. 風にきえないで ("True" mix)

疾走感のあるポップロックナンバー。tetsuyaが作曲。tetsuyaは「バンドのターニングポイントになった」と語る。多重録音したギターが印象的。hydeは歌詞で「自分の想いを守るために他のことを犠牲にしようとする自分」を描いています。アルバムバージョンではイントロのギターがカットされています。

9. I Wish

華やかなパーティーソング。クリスマスをテーマにした楽曲。tetsuyaは黒人が弾くようなノリを意識。kenはエレクトリックギターをカット。メンバーと子供達によるコーラスが印象的。P'UNK〜EN〜CIELとしてセルフカバーもしています。

10. Dearest Love

hydeとtetsuyaのファルセットヴォーカルが印象的なバラード。tetsuyaの弾き語りが原型。フレットレスベースを使用。ギターとヴァイオリンの共存が特徴。tetsuyaがファルセットボーカルを担当。

クレジット

hyde：Vocal
ken：Guitars
tetsu：Bass
sakura：Drums

タイアップ

各楽曲のタイアップ情報は省略

収録ベストアルバム

各楽曲の収録ベストアルバム情報は省略

参考文献

多数の音楽雑誌、書籍を参考文献として記載



*注釈、出典は省略

もう一度検索