U・ロイ

U・ロイ（U-Roy）

U・ロイ（本名：Ewart Beckford、1942年9月21日 - 2021年2月17日）は、ジャマイカのレゲエDJであり、トースティングのパイオニアとして知られています。ダディ、ジ・オリジネーターといった愛称でも親しまれました。

経歴

キングストン、ジョーンズタウン地区で生まれたU・ロイは、1961年頃からドクター・ディッキーズ・ダイナマイト・サウンドシステムでDJとしてのキャリアをスタートさせました。初期はレコード運びなどの裏方作業が中心でしたが、1965年頃からサー・ジョージ・ジ・アトミック・サウンドでマイクを握り始め、本格的な活動を開始します。1968年頃には、キング・タビーにスカウトされ、ホームタウン・ハイファイ・サウンドの専属DJとなりました。

ルイ・ジョーダンらのジャイブトークに影響を受けた彼のトースティングは、ダンスホールで大きな人気を博し、音楽プロデューサーたちの注目を集めました。1969年には、キース・ハドソンの下で録音された「ダイナミック・ファッション・ウェイ」でレコードデビュー。これは世界初のDJによるレコードとされています。この曲はヒットしませんでしたが、1970年にデューク・リードがプロデュースした「ウェイク・ザ・タウン」と「ルール・ザ・ネーション」が立て続けに大ヒットし、ラジオチャートで1位を獲得しました。さらに、「ウェア・ユー・トゥ・ザ・ボール」は12週間連続1位を記録する大ヒットとなりました。

この時期、U・ロイはバニー・リー、リー・ペリー、ソニア・ポッティンジャーなど、数多くのプロデューサーの下でレコーディングを行いました。

スタイルの革新と影響

それまでの合いの手的なトースティングとは異なり、曲全体を通してメッセージを伝えるU・ロイのスタイルは、レゲエDJのあり方を大きく変えました。この革新的なスタイルは、I・ロイ、U・ブラウンなど、多くのフォロワーを生み出しました。U・ロイ自身は模倣されることを快く思わず、「Don't imitate because I originate（真似をするな。俺がオリジナル。）」という曲を発表したほどです。

1971年には、世界初のDJによるアルバム『ヴァージョン・ギャロア』を発表。1975年には、ダリル・ホール&ジョン・オーツがU・ロイの楽曲「ソルダリング」をカバーしたことで、国際的な注目を集め、ヴァージン・レコードとの契約に繋がりました。同年、ヴァージンからアルバム『ドレッド・イナ・バビロン』でメジャーデビューを果たしました。

その後、自身のサウンドシステム、キング・ステレオグラフを立ち上げ、チャーリー・チャップリン、ジョジー・ウェイルズといった後進DJの育成にも尽力しました。

晩年と功績

近年はキングストン郊外に在住し、キング・ステレオグラフの運営を続けていました。2007年には、DJという新たな音楽表現を開拓した功績を称えられ、ジャマイカ政府から名誉勲章を授与されました。日本へは2006年と2008年に来日公演を行っています。

2021年2月17日、糖尿病、高血圧、腎臓病などの健康問題を抱え、手術後の合併症により78歳で逝去しました。

U・ロイは、レゲエ音楽におけるトースティングの発展に大きく貢献し、後の音楽シーンに多大な影響を与えた、まさに「ラッパーの元祖」と呼ぶにふさわしい存在です。

主要アルバム

Version Galore (1971)
Dread in a Babylon (1975)
Natty Rebel (1976)
Rasta Ambassador (1977)
* With Words of Wisdom (1979)

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