VSS (狙撃銃)

VSS（特殊用途狙撃銃）の概説

VSS（露: Винтовка Снайперская Специальная、英: Special Sniper Rifle）は、1987年にソ連で開発された自動消音狙撃銃です。この狙撃銃は、7.62x39mm弾をベースにした亜音速弾、9x39mm弾を使用しており、愛称の「ヴィントレス（Vintorez）」は「糸鋸」を意味します。

開発背景

1980年代の冷戦期、ソ連はアフガニスタンやチェチェンなど多くの戦場を抱えていました。この中で、特殊部隊（スペツナズ）の隠密潜入作戦やゲリラ戦に適した消音銃が急務とされました。従来のAK系ライフルにサプレッサーを取り付ける方式では、音速を超える弾丸による衝撃波が問題となり、効果的な消音が難しいことが判明しました。

そのため、ソ連軍は全く新しい狙撃システムの開発に着手し、特に消音に特化した専用の弾薬を併せて開発する必要がありました。最終的に、ヴォログダ州の研究所TsNIITochMashにてペテロ・セルジェコフとバルディミール・クラスコフがデザインを担当し、1987年にVSSが完成しました。

構造と特長

VSSはガス圧で動作するボルト回転式の設計で、AK-74との共通点が多く見られます。全長は非常に短く、サプレッサーや木製のストックが大きな役割を果たしています。通常は10連のショートマガジンが使われますが、20連マガジンも使用可能です。特別な設計により、射撃時の発砲音をわずか電動エアガン程度まで低減することができました。

また、VSSで使用される9x39mm弾は、音速を超えない特性を持つため、発射時に衝撃波を生じません。この設計によって、従来の軍用ライフルに見られる炸裂音やソニックブームが解消され、消音効果が最大限に引き出されています。

弾薬の概要

VSSで使用される9x39mm弾は、その設計によって初速が音速を超えないという特性を持ちつつ、貫通力も維持されています。これは、7.62x39mm弾を基盤にした特殊な弾薬で、通常よりも重い弾頭を使用することで威力を確保しています。カタログ上は400mの有効射程が設定されていますが、弾道の低落量が多いため、長距離での精密射撃には限界があります。

この弾薬には様々なバリエーションが存在し、例えば、SP-5は通常のボール弾、SP-6は徹甲弾です。これらの弾薬によって、特定の用途に応じた性能を発揮します。

バリエーション

VSSの進化系として、VSSMやAS Valと呼ばれる近代化モデルが存在します。これらは現代戦における必要性に応じて改良され、機能性や操作性が向上しています。VSSMは特に、ピカティニーレールの追加による新しい照準器の装着などが可能となり、より多才な用途に対応できるようになっています。

関連項目

VSSの開発や使用に関する情報は、狙撃銃全般やその他のロシア軍関係の兵器に関心を持つ人々にも有益です。特にAK系ライフルやドラグノフ狙撃銃との比較は、多くの知識を提供してくれます。

これまでの経緯からも分かるように、VSSは冷戦時代の特殊部隊における戦略に特化したユニークな兵器であり、その特性は今なお現代の軍事戦略に影響を与えています。

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