W-VHS

W-VHS（ダブルブイエイチエス）とは

W-VHSは、1993年1月8日に日本ビクター（現：JVCケンウッド）から発表された民生用アナログビデオ規格です。VHS規格の上位規格として策定され、HD（高精細）およびSD（標準画質）記録に対応していました。

開発と普及

1993年12月28日、日本ビクターから初のW-VHSレコーダー「HR-W1」が発売され、その後1995年には普及機兼改良版の「HR-W5」が登場しました。しかし、1990年代はハイビジョンの需要が低く、W-VHS製品はほとんど普及しませんでした。

特徴

上位互換性

W-VHSはVHS規格シリーズの特徴である上位互換性を備えており、VHSやS-VHSなどのテープの再生・録画が可能です。これにより、過去のVHSライブラリーを有効活用できるという利点がありました。

テープと記録方式

W-VHSはVHS方式を基本としていますが、より高出力を実現するため、塗布型のメタルテープ（MP）を採用しています。また、カートリッジはDVテープのような防塵タイプです。記録モードは、ハイビジョン記録が可能なHDモード、アナログ地上波放送用のSDモード、そしてNTSC信号の2チャンネル同時録画が可能なSD2モードがあります。テープへの記録方式は、ムービー利用や世界展開を考慮し、2トラックパラレル記録によるベースバンド方式を採用しています。

高画質

HDモードでは、ハイビジョン180分用のテープで540分記録可能で、輝度信号と色信号を別々の領域に記録するTCI方式を採用し、S/Nの向上も図られています。これにより、S-VHSと比較しても画質が大幅に向上しました。このため、ハイビジョン録画を行わないユーザーや業者にも、高画質なNTSC信号記録機器として利用されることがありました。

市場と後継規格

規格制定当時はハイビジョンが主流になると想定されていましたが、MUSE方式対応のテレビやデコーダーが高価であったため、W-VHSは普及しませんでした。民生用W-VHSビデオデッキは、日本ビクターの2機種と、それらのOEM提供を受けた松下および日立の製品のみで終わりました。業務用としては、放送局、制作プロダクション、医療現場などで利用されました。
2000年には、BSデジタル放送の開始に合わせて、実質的な後継規格であるD-[[VHS]]が登場しました。

その後の展開

2007年にMUSE方式を利用したハイビジョン放送が終了したため、W-VHSの役割はほぼ終わりました。しかし、別途BSデジタル放送や地上デジタル放送対応のテレビやチューナーを接続すれば、より高画質で記録・再生が可能です。ただし、W-VHSはアナログハイビジョンの記録用途として規格化されたため、デジタルHDTVの1080本に対して1032本しか記録できません。
W-VHS専用テープは、2014年1月末に生産が完了しました。

デジタル技術の進歩

デジタルハイビジョンの技術革新は著しく、2010年代後半にはスマートフォンでもW-VHSを凌駕する高画質での撮影が可能となりました。スマートフォンに搭載されたカメラは、4K60fpsや8K24fpsでの撮影も実現しています。

現在の利用

現代においてW-VHSビデオデッキは、アナログハイビジョンの資産が少ないため、高精度なヘッドを利用し、S-VHS以下の規格のビデオテープを高品質にデジタル化する目的で利用されています。

まとめ

W-VHSは、当時としては高画質・高音質を目指した野心的な規格でしたが、市場のニーズや技術革新の流れの中で、その役割を終えました。しかし、その技術は後のデジタルビデオ技術の発展に貢献しました。

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