W87 (核弾頭)

W87核弾頭：アメリカ合衆国ICBMの核弾頭の歴史と技術

W87は、アメリカ合衆国が開発した熱核弾頭であり、大陸間弾道ミサイル（ICBM）への搭載を目的として設計されました。ローレンス・リバモア国立研究所で開発されたこの弾頭は、アメリカ空軍の核戦力において重要な役割を果たしてきました。

開発と配備

W87の開発は、新型ICBMであるLGM-118A ピースキーパーへの搭載弾頭として、1982年に開始されました。ピースキーパーは、最大11基の多弾頭（MIRV）を搭載可能であり、W87はMk.21再突入体に搭載されて配備されました。その設計は、アメリカ海軍のUGM-133A トライデント II潜水艦発射弾道ミサイル用のW88核弾頭と類似した部分を持っています。

W87の物理的な仕様は、直径約55cm、長さ約175cm、重量は200～270kgで、核出力は300キロトンです。空中爆発や触発など様々な信管が用意されており、プライマリーにはプルトニウム、セカンダリーには重水素化リチウム、そしてタンパーには高濃縮ウランが使用されています。

量産は1986年7月から1988年12月まで行われ、525発が生産されました。

Mod 1と開発中止

1987年には、単弾頭ICBMであるミゼットマンへの搭載を目的とした改良型、Mod 1の開発が開始されました。Mod 1は核出力が475キロトンに増強されましたが、1988年に開発は一時中止となり、1992年にはミゼットマンと共に完全に開発中止となりました。

寿命延長とミニットマンIIIへの搭載

1994年からはW87の寿命延長のための改良が行われ、2005年のピースキーパーの退役後、余剰となったW87弾頭は、老朽化した弾頭を更新するためにミニットマンIII ICBMに搭載されることになりました。2006年から、ミニットマンIIIへのW87搭載作業が実施され、アメリカ軍の核弾頭削減方針と合わせて、ミサイル1基につきW87弾頭1基（Mk.21再突入体）を搭載する体制となりました。

次世代ICBMへの搭載計画

将来的なICBMであるLGM-35 センチネルへの搭載も計画されており、その際には、Mk.21再突入体とW87弾頭の改良型が使用される見込みです。

まとめ

W87核弾頭は、冷戦期から現代に至るまで、アメリカ合衆国の核戦力において重要な役割を果たしてきた核兵器です。その開発、配備、改良の歴史は、核戦略や技術開発の動向を理解する上で重要な事例研究となっています。 W87の開発とその後の運用、そして将来的な計画は、核兵器の管理や近代化、そして国際情勢における核拡散防止の議論に深く関連する重要な要素となっています。今後、W87の技術や運用に関する更なる情報が公開されることで、その役割や重要性をより深く理解できるようになるでしょう。 また、W87の開発・配備は、アメリカ合衆国の核戦略の変遷を如実に示しており、将来的な核軍縮や核不拡散への取り組みを考える上でも重要な視点を提供しています。 さらに、W87の開発に携わった科学者や技術者たちの貢献も忘れてはならないでしょう。彼らの努力によって、この高度な核兵器技術が実現したのです。

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