Wubi(Windows-based
Ubuntu Installer)は、Windows上で動作する
Ubuntu公式のインストーラーです。このツールを使うことで、既存のWindows
ファイルシステム上に
Ubuntuを
インストールできます。これにより、ユーザーはディスクの
パーティションを分割することなく、Windowsと
Ubuntuの両方を簡単に試せるようになります。
Wubiの概要
Wubiは、もともと独立したプロジェクトとして始まりました。バージョン7.04および7.10では非公式にリリースされていましたが、8.04からは
Ubuntuの公式パッケージとなり、
Ubuntu 8.04 alpha 5以降は
Ubuntu LiveCDに同梱されています。このプロジェクトの主な目的は、
Linuxに不慣れなWindowsユーザーが、データ損失のリスクを気にせずに
Ubuntuを試せるようにすることでした。また、Wubiを使えば、Windows上から
Ubuntuを安全にアン
インストールすることも可能です。
Wubiは仮想マシンではありません。Topologilinuxのように、ループバックデバイス(ディスクイメージ)上で独立して動作します。そのため、厳密には
Linuxディストリビューションではなく、
Ubuntuのインストーラーとして機能します。Wubiは
Ubuntuを直接
パーティションに
インストールしませんが、LVPM(Loopmounted Virtual Partition Manager)を利用することで、Wubiで作成した
Ubuntu環境を
Linux用ディスク
パーティション(USBフラッシュドライブなど)から直接起動するネイティブ環境に移行することもできます。これにより、ディスクの
パーティション分割をせずに、OSやドライバーの動作確認が可能になります。
Wubiの仕組み
Wubiは、Windows
ブートメニューに
Linuxを実行するためのエントリを追加します。
Ubuntuは、Windows
ファイルシステム内のファイル(例:`c:\ubuntu\disks\root.disk`)に
インストールされます。
Linuxからは、このファイルが実際のハードディスクとして認識されます。また、Wubiはホストマシンのメモリに加えて、Windows
ファイルシステム内にもスワップファイル(例:`c:\ubuntu\disks\swap.disk`)を作成します。このファイルは、
Ubuntu上で追加のRAMとして扱われます。
関連プロジェクトとしてLubiがありますが、これはWindowsではなく
LinuxをホストOSとして使用していました。しかし、2007年以降このプロジェクトは稼働しておらず、
Ubuntu 7.04でのみ動作します。
なお、Wubiは
Ubuntu 13.04から公式ダウンロードページでの
インストールオプションとしては削除されました。しかし、
Ubuntu 13.04以降のバージョンでも、Wubi自体は引き続き利用可能です。
デスクトップ環境
Wubiでは、
インストール時にデスクトップ環境を選択できます。ただし、各デスクトップ環境はアプリケーションパッケージとしても利用できるため、最初は
Ubuntu(初期オプション)を
インストールし、後から他のデスクトップ環境を追加することが推奨されています。
インストール後、ユーザーはログイン時に使用するデスクトップ環境を選択できます。
Wubiの制限事項
Wubiを使った
インストールには、通常の
インストールと比較していくつかの制限があります。休止状態はサポートされておらず、
ファイルシステムはハードリ
ブート(電源の再投入など)に対して脆弱です。また、Windowsドライブが何らかの理由(Windowsの破損や停電など)で正しく認識されない場合、Windowsが正常に起動してドライブを修復し、正常にシャットダウンするまで、
UbuntuはWindows NTFSドライブから修復も再マウントも起動もできません。Windowsシステムが起動できない場合は、
Ubuntuも起動できなくなります。
さらに、Wubi
インストールではハードディスクへのアクセスパフォーマンスが若干低下します。これは、Wubiがない場合はハードウェアに直接アクセスするのに対し、WubiではWindows
ファイルシステム内のディスクイメージファイルにアクセスするためです。ディスクイメージファイルが断片化している場合は、さらにパフォーマンスが低下します。
Wubiは、Windows OS上でNTFS
ファイルシステムを使って`root.disk`ファイルを作成し、
Ubuntu OS実行中は別の
ファイルシステムドライバーを使ってそのファイルにアクセスします。NTFSのWindows実装と
Linux実装の違いから、Windowsの起動を妨げる形でNTFS
ファイルシステムに影響を与え、`root.disk`ファイルの破損につながる可能性があります。破損したNTFS
ファイルシステムを修復するためにWindowsから`chkdsk /r`を実行し、その後Windowsを正常にシャットダウンすることで、軽度の破損は修復できる場合があります(`root.disk`は大きなファイルなので、修復には時間がかかることがあります)。
影響
Wubiは、Debianインストーラ、Migration-Assistant、Grub4Dos、NTFS-3G、NSIS、Metalinkといったオープンソースプロジェクトの影響を受けています。
開発
Wubiの主な開発者は、アゴスティーノ・ルッソ、ゲーザ・コバーツ、オリバー・マトス、Ecology2007です。開発はLaunchpadで行われ、ルパンチームが主導しました。Lupin、Lubi、LVPMなどのプロジェクトページも参照できます。
ハードウェアサポート
WubiおよびLubiは、8.04以降の
Ubuntu i386(32ビット x86)およびx64版をサポートしています。8.04以前は、
Ubuntuのx86発売版のみをサポートしていました。
Wubiの端緒
Red Hat
Linuxや
SlackwareのZipSlackを含む多くの
Linuxディストリビューションは、1990年代半ばにSYSLINUXとUMSDOS
ファイルシステムドライバを使って同様のツールを提供していました。その後、SUSE社がFAT
ファイルシステム上でsyslinuxとループマウントされたディスクイメージを使って同様のツールを提供していました。90年代後半には、
BeOSが同様のシステムを使ってWindows内のフォルダにOSを
インストールしていました。
Wubiのアイデアは、ループマウントされた
インストールを提供するTopologilinuxと、シンプルなWindowsフロントエンドを提供するInstluxから着想を得て、アゴスティーノ・ルッソによって起草されました。これは、
UbuntuのイメージをループマウントするWindowsインストーラーという2つの概念を統合するものでした。
その後、ゲーザ・コバーツが仕様を改良し、その概念が機能することを実証する最初の試作品を提供しました。オリバー・マトスは、NSISを使ってオリジナルのユーザーインターフェースを作成しました。
その後、アゴスティーノ・ルッソはループ
インストールの概念を改良し、単にループマウントされた事前作成イメージファイルから、動的にパッチを適用したバージョンのDebianインストーラを使ってその場で作成されたイメージへと移行しました。これにより、初期プロトタイプのいくつかの問題に対処しつつ、実際の
インストールに近いエクスペリエンスを提供しました。ルパンプロジェクトはこのようにして誕生し、アゴスティーノ・ルッソがコードの大部分を実装しました。ゲーザ・コバーツも貢献しました。
後に、アゴスティーノ・ルッソとEcology2007は、現在のWindowsフロントエンドを再設計し、書き直しました。ハンプス・ウェスマンは新しいダウンローダーと翻訳スクリプトを寄稿しました。Bean123とTinybitは、
ブートローダーの問題をデバッグおよび修正して支援しました。LubiとLVPMは、その後ゲーザ・コバーツによって作成されました。
このプロジェクトは、Win32ローダーなど他のWindowsベースの
Linuxインストーラーの開発にも影響を与えました。
関連項目
Ubiquity - Ubuntu OSのインストーラ
Cooperative
Linux -
LinuxをWindows上で実行可能にしたもの
Debianインストーラ
Win32ローダー - 類似のチェーン
ブートの仕組みで、CDが無くとも Debian を
インストールする
UNetbootin - 似た手法の、CD無しでの標準的なLinuxインストール
外部リンク
Wubi 公式サイト