X艇

X艇（X-craft）

X艇はイギリス海軍が1942年から1944年にかけて建造した小型潜水艦で、正式にはX級潜水艦と呼ばれています。その独自の設計は、小型ながら特定の作戦に特化した攻撃力を持っており、連合軍における重要な役割を果たしました。

運用方法

X艇は母艦となる通常サイズの潜水艦に曳航されて作戦海域へと移動しました。到着後、回航担当の乗組員は別のゴムボートで母艦に戻り、作戦担当の乗組員がX艇に乗り込みました。作戦が完了すると、再び母艦と合流し、港に戻る運用形態が採られていました。X艇の航続距離は、特に訓練を受けた乗員の能力に依存しており、最大で2,400 kmの距離を航行できる可能性がありましたが、実際の航続距離は500海里程度に限られていました。

設計と構造

X艇は全長約15.5m、全幅約1.68m、重さは水上で27トン、水中で30トンであり、非常にコンパクトなデザインでした。機関は、陸上および水中用に異なるエンジンを搭載し、水上で最大6.5ノット、水中で最大5.5ノットの速度を出すことができました。最初は3名の乗員だけでしたが、後にフロッグマンが追加され、実質約4名での運用が一般的となりました。

武装については、船体両舷にアマトール爆薬を使用した2トン分の爆弾を装備しており、これを目標海域に設置することで敵艦への攻撃を行いました。この爆弾は、信管が時限式であり、設置後にX艇は脱出する必要があったため、高度な技術が求められました。

作戦活動

X艇は多くの戦闘任務に参加しました。最初の作戦としては、1943年にノルウェーを拠点とするドイツ艦隊に対するソース作戦があります。この作戦には6隻のX艇が参加しましたが、成功裏に爆薬を設置できたのはX6とX7の2隻のみでした。この結果、ドイツの戦艦ティルピッツは深刻な損傷を受け、操業を停止することに至りました。

その後、X艇はノルマンディー上陸作戦においても重要な役割を担いました。具体的には、上陸海岸を偵察するためにX20が使用され、フロッグマンによる海岸の土壌サンプルの収集が行われました。さらに、上陸当日にはX20とX23が上陸艦隊を正確に誘導するための役割を果たしました。

戦歴

X艇は多くの作戦に寄与した一方で、その運用は厳しいものでした。X3は浸水で沈没し、X5、X6、X7はいずれも戦闘中に自沈し、X24は攻撃任務に成功したものの誤って貨物船を沈めてしまうなど、様々な事態が発生しました。X艇シリーズの中で現在も現存するのはX24のみであり、これは王立潜水艦博物館に展示されています。

メディアでの取り上げ

X艇の活動は映画『潜水戦隊帰投せず』や『潜水艦X-1号』といった作品にも描かれており、戦争映画としての評価を得ています。

まとめ

X艇は、特異な役割を持った小型潜水艦として、イギリス海軍の様々な作戦に貢献しました。その設計や戦術は、潜水艦戦の新たな地平を切り開くものであり、多くの勇敢な乗員たちによる歴史的な貢献を象徴しています。

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