X-34 (航空機)

X-34

X-34は、アメリカ航空宇宙局（NASA）が、オービタル・サイエンシズ社に開発を委託した再使用可能な宇宙往還機の技術試験機です。1990年代後半、スペースシャトルに代わる、より安全で経済的な軌道への輸送手段の必要性が高まる中で構想され、将来の宇宙輸送システム開発に資する技術実証を目的としていました。開発は1996年に開始されましたが、様々な課題に直面し、最終的に2001年に計画は中止されました。

概要

1990年代後半、NASAは現用のスペースシャトル運用コスト削減と安全性向上を目指し、後継となる低コストな軌道輸送システムの開発を模索していました。X-34計画は、こうしたニーズに応えるため、再使用型宇宙往還機の基盤技術を開発・検証するために1996年に始動しました。機体の開発担当には、小型人工衛星打ち上げロケットであるペガサスの開発・運用で実績のあったオービタル・サイエンシズ社が選ばれました。

機体と運用計画

X-34Aと呼ばれる基本モデルは、無人のロケット推進機として設計されました。機体は単一の垂直尾翼を備え、低翼配置のクリップド・デルタ主翼に加えてストレーキを有するという特徴的な形態をしていました。運用構想では、オービタル・サイエンシズ社が保有する大型輸送機、改造されたロッキード L-1011 トライスター「スターゲイザー」の胴体下部に懸架され、高度約10,000メートルからの空中発進が予定されていました。

推進システムには、液体酸素（LOX）とケロシンを燃料とする単基のロケットエンジンが搭載される計画でした。これにより、最大速度マッハ8、到達高度約80キロメートルを目指し、亜軌道領域での高速飛行や大気圏再突入技術のデータを収集する計画でした。また、悪天候下での運用能力を確保することや、整備を迅速に行い、2週間間隔という短い周期での打ち上げを可能にすることも重要な開発目標の一つでした。当初は、技術試験用に合計3機の機体を製造することが計画されていました。

開発の経緯と中止

X-34の開発計画は1996年に本格的にスタートしましたが、比較的早い段階で困難に直面します。1997年には予算上の問題が浮上し、当初1998年に予定されていた最初の飛行試験は延期を余儀なくされました。計画の遅延は続き、エンジンを搭載しない最初の構造試験機が完成したのは1999年4月30日でした。この機体は同年6月29日には母機であるスターゲイザーに搭載され、適合性や空力特性などを確認するためのキャプティブ・フライト試験（非分離飛行試験）が実施されました。

しかしながら、技術的な課題の解決や、継続的な予算の確保が難航し、エンジンを搭載した実機仕様の2号機以降の製造は進みませんでした。開発コストの増大や計画の遅延が重なった結果、最終的には計画を継続することが当初の目標としていたコスト削減や費用対効果に見合わないと判断されました。これにより、NASAは2001年3月にX-34開発計画の正式な中止を決定しました。

なお、基本型であるX-34Aの他に、推進システムを双発とする改良型であるX-34Bの構想も存在しましたが、本体計画の中止に伴い、こちらも実現には至りませんでした。X-34計画は、低コストかつ迅速な再使用型宇宙輸送システムの実現がいかに困難であるかを示す事例の一つとなりました。

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