XM800装甲偵察車

XM800装甲偵察車：幻に終わったアメリカ陸軍の偵察戦闘車

XM800装甲偵察車は、1970年代にアメリカ陸軍が開発していた偵察戦闘車です。しかし、試作車が製造されたのみで、制式採用には至りませんでした。

開発の経緯

1958年、アメリカ陸軍は次世代装甲戦闘車両の開発を開始しました。1965年、MICV-65計画が具体的に始動、これは歩兵戦闘車の開発を主目的としていましたが、同時に騎兵部隊向けの装甲偵察車（ARSV）の開発も進められることになりました。MICVとARSVの計画には直接的な関連性は薄かったものの、多くの共通点がありました。

ARSV計画は1972年に具体化し、同年5月22日、FMC社とロッキード社が競争試作の契約を結びました。FMC社は4つの転輪を持つ装軌車XM800Tを提案、ロッキード社は6輪の装輪車XM800Wを提案しました。当初、両社はスイス・エリコン社製のエリコンKADのアメリカ版であるM139 20mm機関砲を装備した同一設計の砲塔を搭載する予定でしたが、後にXM800Wは独自設計の砲塔に変更されました。試作車は1973年11月に陸軍に引き渡され、比較試験を受けることになりました。

性能評価と計画の中止

しかし、XM800は当時運用されていたM114装甲偵察車よりも優れているとは言えず、むしろ劣る点もありました。唯一勝っていたのはM139 20mm機関砲による火力でしたが、1969年から配備が開始されたM114A1E1（後のA2）にM139が搭載されたことで、この優位性も失われました。陸軍はM114の性能にも不満を抱いていたため、それよりも性能が低い車両を新規採用することは認められませんでした。

火力の不足を補うため、クライスラー社製のBGM-71 TOW対戦車ミサイルの発射筒2基を装備したITV（Improved TOW Vehicle：改良型TOW搭載車）型も開発されましたが、陸軍の評価は芳しくありませんでした。比較試験で劣勢だったロッキード社は政治工作に訴え、姉妹プロジェクトであるMICV計画も混乱していたことから、1975年にXM800 ARSV計画は最終的に中止され、いずれの案も採用されずに終わりました。

その後

次世代装甲偵察車開発計画はMICV計画と合流し、最終的にM2ブラッドレー歩兵戦闘車とファミリー化されたM3ブラッドレー騎兵戦闘車が開発されました。

生産された試作車は廃棄処分を免れ、博物館や駐屯地の展示品として現存しているほか、少数が民間に放出されています。

参考文献

Jane's World Armoured Fighting Vehicles, 1976.
globalsecurity.org (2006年7月1日). “XM800 Armored Reconnaissance Scout Vehicle” (HTML) (英語). 2010年2月4日閲覧。

関連項目

偵察戦闘車
M114装甲偵察車
M2ブラッドレー歩兵戦闘車
M3ブラッドレー騎兵戦闘車
* 87式偵察警戒車

もう一度検索