YPX (航空機)

川崎重工業 YPX：幻の小型旅客機計画

YPXは、川崎重工業が構想した100-150席クラスの小型旅客機計画です。海上自衛隊のP-1哨戒機をベースに開発が検討されましたが、2017年現在、具体的な進展は見られていません。

YPXの設計思想

YPXは、ボーイング737やエアバスA320といった短距離路線で需要の高い機体よりも小型のリージョナルジェットとして計画されました。川崎重工業は、ボーイング737-700と比較して最大15%の運航経費削減を目指していました。

2007年時点の仕様では、YPX-11は2クラス113席、YPX-10は2クラス93席、YPX-12は全席エコノミーで約150席となる予定でした。標準的な航続距離は3機種とも4,260kmでしたが、YPX-10とYPX-11には航続距離延長型（5,930km）も計画されていました。

機内は、横5列配置のエコノミーシートが並び、胴体断面は従来の二重円形ではなく、滑らかな楕円形を採用することで快適性の向上が図られていました。エコノミーシートの幅は46cm、座席間隔は51cmとされています。

開発の難航と課題

しかし、2012年の時点で防衛省と川崎重工業は、P-1哨戒機をそのまま転用した旅客機は市場性に乏しく、大幅な設計変更が必要となるため実現が困難であるとの見解を示しています。

このクラスの民間機は、コストと燃費のバランスから双発エンジンが主流ですが、P-1は海上自衛隊の要求により国産ターボファンエンジンを4基搭載しており、大幅な設計変更が必要となります。2013年3月には、川崎重工業が旅客機への転用について「具体的な動きはない」と発表しました。

計画中止の背景

YPX計画が実現しなかった背景には、以下の要因が考えられます。

市場のニーズとのミスマッチ: P-1をベースとした機体は、市場のニーズに合致せず、大幅な設計変更が必要であったこと。
コスト: 新規開発に近い設計変更が必要となるため、開発コストが膨大になる可能性があったこと。
競合: ボーイングやエアバスといった既存メーカーとの競争が激しく、新規参入の障壁が高かったこと。

関連事項

PX-L：P-1哨戒機の派生型として提案された、早期警戒機。
日本の旅客機開発計画の歴史：YS-11、YX、YXX、YSX、Mitsubishi SpaceJetなど、過去にも様々な旅客機開発計画が存在しました。

参考資料

前間孝則『日本はなぜ旅客機を作れないのか』草思社、ISBN 4-7942-1165-1
前間孝則『国産旅客機が世界の空を飛ぶ日』講談社、ISBN 4-06-212040-2

外部リンク

日本航空機開発協会
* 日本航空宇宙工業会

※この解説は、公開されている情報に基づいて作成されています。

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