Z-45

Z-45 短機関銃：スペインが生んだ独自の進化

Z-45は、第二次世界大戦終盤にスペインで開発された短機関銃です。ナチス・ドイツのMP40を原型としつつ、スペイン独自の改良が加えられた点が特徴です。スペイン軍だけでなく、ラテンアメリカ諸国を中心に広く採用されました。

概要

Z-45は、MP40の基本構造を踏襲しつつも、細部にわたって独自の工夫が凝らされています。

木製部品の採用: ピストルグリップとフレームカバーには木材を使用し、手に馴染むように設計されています。
放熱用銃身覆いと制退器: 銃身には放熱性を高めるための覆いが取り付けられ、初期のトンプソン・サブマシンガンに似た制退器を備えています。この制退器は、銃身を前方へ抜き出す際に利用します。
安全装置: コッキングレバーを利用した安全装置は、MP40とは異なり、コッキングレバー後面のボタンを押し込む形式で、右側面に配置されています。
9x23mmラルゴ弾: 9x19mmパラベラム弾よりも強力な、当時のスペイン軍制式拳銃弾である9x23mmラルゴ弾を使用します。
射撃モードの切り替え: 引き金の引き具合でセミオートとフルオートを切り替えることができます。軽く引くとセミオート、深く引き切るとフルオート射撃が可能です。
ファイアリングピン: ファイアリングピンはボルト内蔵式に変更され、ボルトが完全に閉鎖されてからファイアリングピンが突き出す機構を備え、不完全閉鎖時の暴発を防止します。
弾倉止めボタン: 弾倉止めボタンは右側面に配置されています。
バリエーション: 標準モデルはMP40と同様の金属製折畳銃床と30発箱型弾倉を備えていますが、警察用モデルとして、MP41に類似した木製固定銃床と10発箱型弾倉を備えたものも存在します。また、9x23mmラルゴ弾仕様のほか、9x19mmパラベラム弾、.38スーパー弾、.45ACP弾を使用するモデルも存在しました。

歴史

スペインのSTAR社は、内戦の頃から短機関銃を製造していましたが、評価は高くありませんでした。1942年に短機関銃の生産を打ち切り、ドイツ人技術者を迎え入れて新型短機関銃の開発を開始しました。1944年に完成した新型短機関銃は、1945年にZ-45としてグアルディア・シビルに採用され、その後、警察、空軍、陸軍にも採用されました。

Z-55という伸縮式銃床を備えた軽量化モデルも設計されましたが、少数のみの生産に終わっています。1962年には新設計のZ-62短機関銃が採用され、Z-45シリーズは第一線を退きました。

STAR社が製造した短機関銃の中で初めて公的機関に採用された製品であり、スペイン軍や警察のほか、ラテンアメリカ諸国を中心に輸出されました。チリ、キューバ、サウジアラビアなどへの輸出が確認されており、アンゴラ、エジプト、モーリタニア、ペルー、ポルトガル、ウルグアイ、ジンバブエなどでも使用されました。

Z-45は、MP40の設計をベースに、スペインの状況に合わせて改良された短機関銃であり、その後のスペイン製短機関銃の開発に大きな影響を与えました。

もう一度検索