EXPERT

EXPERT - 欧州宇宙機関の再突入実験機

EXPERT（European eXPErimental Re-entry Test-bed）は、欧州宇宙機関（ESA）が設計した次世代の大気圏再突入実験機です。このプロジェクトは、再突入時における空気熱力学的データを収集し、数値シミュレーションや風洞試験の結果と照らし合わせて、その信頼性を加味した研究を行うことを使命としています。このような取り組みの中で、EXPERTで得られた耐熱設計や空力制御技術は、次に計画されているIXV（Intermediate Experimental Vehicle）再突入試験機に利用され、将来のスペースプレーン開発の基礎的な要素となることが期待されています。

専門的な設計

EXPERTの再突入体は、全長1.6メートルの円錐形状をしており、重量は436kgです。この設計には、快適な飛行を保証するために4枚の空力フラップが備えられています。耐熱セラミック複合材が使用された先端の丸みを帯びたノーズキャップと、オランダのダッチ・スペース社が開発した金属熱防護システムが機体の本体に採用されています。この組み合わせにより、再突入時に発生する高温に対して高い耐性を持つことが可能となっています。

ただし、ノーズキャップと主要構造体との間には、熱膨張が異なるため、設計段階では特に乱流の影響を考慮する必要がありました。また、ノーズキャップ部に対しては水冷却の可能性も検討されています。

開発と予算

EXPERT開発には約6400万ドルの予算が投じられ、主契約企業としてタレス・アレーニア・スペースが関与しています。当初の計画では、ロシアのヴォルナロケットを使用してSLBM技術を転用し、東太平洋の潜水艦から発射して、高度約120kmに達する10分間の弾道飛行を行った後、再突入角度5.5度、秒速5km（マッハ14）にて大気圏に突入し、カムチャッカ半島のクラ射爆場でパラシュート降下を行うことが予定されていました。しかし、2012年にロシア側が商用打ち上げを中止する決定をしたことにより、EXPERTの打ち上げ手段および日程は不透明な状況に置かれています。

結論

EXPERTプロジェクトは、再突入却下時のデータを収集する重要なステージとして位置づけられています。将来的には、これらの技術がスペースプレーン開発に寄与し、宇宙へのアクセスを一層広げることが期待されます。欧州宇宙機関の公式ホームページでは、最新の情報が提供されていますので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。

もう一度検索