MASSIVE

Massive：映画制作を革新した群衆シミュレーションソフトウェア

Massiveは、映画やテレビ番組における大規模な群衆シーンを、リアルで効率的に生成するための3次元コンピュータグラフィックス（3DCG）と人工知能（AI）を組み合わせたソフトウェアパッケージです。その名称は、Multiple Agent Simulation System in Virtual Environmentの略称であり、その名の通り、多数のエージェントを仮想環境内でシミュレートする能力に長けています。

リアルな群衆描写を実現する技術

VFX業界のニーズに応えるべく開発されたMassiveは、数千から数万もの個々のエージェントを容易かつ迅速に生成し、制御することができます。各エージェントは、ファジィ論理に基づいて周囲の状況に独立して反応し、その挙動は外部からも調整可能です。モーションキャプチャデータを取り込むことで、よりリアルな動きを付与することもできます。

単なる群衆シミュレーションにとどまらず、布地シミュレーション、剛体の力学計算、GPUによる高速レンダリングといった高度な機能も搭載しています。さらに、スタジアムの観客、暴徒、会話を行う通行人など、様々なタイプのプリセットエージェントも用意されており、ユーザーは目的に最適なエージェントを選択できます。

MayaやViconモーションキャプチャシステムとの高いデータ互換性を持ち、RenderManやmental rayといった業界標準のレンダリングエンジンにも対応しています。スケルトン構造に一切の制約がなく、物理シミュレーション機能も備えているため、顔の表情変化や音声同期、クロスシミュレーションといった高度な表現も可能です。

開発背景と歴史

Massiveは、ニュージーランドのウェリントンでStephen Regelous氏によって開発されました。当時、ピーター・ジャクソン監督は、映画『ロード・オブ・ザ・リング』における大規模な戦闘シーンをソフトウェアで制作したいと考えていましたが、それに対応できるシステムは存在しませんでした。この課題に対してRegelous氏が開発したMassiveは、WETAデジタルによる革新的な視覚効果の創出に大きく貢献し、特に『ロード・オブ・ザ・リング』三部作における戦闘シーンは、その代表的な成果と言えるでしょう。

その後、製品化され、多くのVFX企業にライセンス供与されるようになりました。

幅広い作品への適用

Massiveは、数多くの映画やテレビ番組の制作に利用されてきました。その代表的な作品として、『ロード・オブ・ザ・リング』三部作、『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』、『キング・コング』（2005年版）、『父親たちの星条旗』（本作では戦闘シーンだけでなく、軍艦の描写にもMassiveが使用されました）、『アイ,ロボット』、『俺たちフィギュアスケーター』、『エラゴン』、『ハッピー フィート』、『300 〈スリーハンドレッド〉|300_〈スリーハンドレッド〉』などが挙げられます。

技術的特徴とサポート環境

Massiveは、ファジィ論理、Maya、モーションキャプチャ技術といった様々な技術を統合した高度なソフトウェアです。サポートされているオペレーティングシステムは、Windows XP、Windows 7、Fedora Core 4、Fedora 8、Fedora 14、Red Hat Enterprise 4、Red Hat Enterprise 5などです。（32ビット版と64ビット版が用意されています。）

Massiveは、映画制作における群衆描写のあり方を変え、現代VFX技術の進化に大きく貢献した画期的なソフトウェアと言えるでしょう。

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