Ω

ギリシア文字「Ω」（オメガ）の詳細解説

ギリシア文字の最後の文字である「Ω」（オメガ）は、古代ギリシア語では「ὦ（オー）」、現代ギリシア語では「ωμέγα（オメガ）」と発音されます。この文字は、ギリシア数字で800を表し、キリル文字の「Ѡ」の起源でもあります。また、「⍜」（Οの下に横棒）という書体も使われています。

起源

「Ω」はフェニキア文字に由来せず、長く広い円唇後舌半広母音/ɔː/を表すために考案されました。古代では、この音は短母音と同じく「ο」（オミクロン）で表記されていましたが、東イオニア地方で短母音の「ε」と長母音の「η」を区別したように、長母音専用の文字が作られました。その形状は「Ο」を変形させたもので、地域によっては「」のように書かれたこともあります。イオニア式アルファベットは紀元前5世紀以降、ギリシア世界全体の標準として使用されるようになりました。

古代の文字名称は単に「ὦ（オー）」でしたが、西暦2-3世紀に母音の長短区別が失われると、短い「Ο」と長い「Ω」を区別するために、前者を「小さなオ」（ὂ μικρόν）すなわち「オミクロン」、後者を「大きなオ」（ὦ μέγα）すなわち「オメガ」と呼ぶようになりました。

一部の文法書では「オーメガ」と発音されますが、歴史的経緯からは適切とは言えません。

象徴としての用法

「Ω」は最後の文字であることから、最終や究極を意味する象徴として用いられます。「アルファからオメガまで（最初から最後まで）」という表現や、新約聖書ヨハネの黙示録にある「私はアルファでありオメガである」という言葉は、この文字が持つ意味をよく表しています。この言葉は、始まりと終わり、すなわち全てを包括する存在を指し、神の全能性を示すものと解釈されます。

記号としての用法

大文字の「Ω」は、様々な分野で記号として用いられます。

素粒子物理学: ハイペロンの一つ（sssからなる）を表します。
電気工学: 電気抵抗の単位「オーム」を表します。
数学:
計算複雑性理論や解析学で使われるオーダー記号の一つ（ランダウの記号参照）。
オメガ定数およびランベルトのW関数。
計算理論におけるオメガ数（停止確率）。
nの重複を含めた素因数の総数を与える関数をΩ(n)と表記。
最小の非可算順序数。
天文学: 昇交点黄経を表します。
宇宙論: 宇宙の密度パラメーターを表します（宇宙論パラメータを参照）。
Ω巻き: ヘリカルスキャンVTRのテープ走行レイアウトの一方式です。

小文字の「ω」もまた、多くの分野で記号として使われます。

物理学: 角速度を表します。
数学:
ζに次ぐ第2の複素数、あるいは未知数を表す際に用いられます。
1の虚立方根（虚数である立方根）のいずれか一方を表すことがあります。
nの相異なる素因数の個数を与える関数をω(n)と表記。
自然数全体の集合の濃度。
天文学: 近日点引数を表します。
素粒子物理学: オメガ中間子を表します。
国際音声記号: 円唇後舌め広めの狭母音を表す「ʊ」は、大文字「Ω」の逆さに由来します。

符号位置

オームの単位記号（Ω）は「Ω」に由来しますが、Unicodeでは別の文字として定義されています。Unicodeのオーム記号は、既存の文字コードとの互換性のために用意された互換文字であり、Unicode標準では代わりに「オメガ大文字」を使うことを推奨しています。

参考文献

W. Sidney Allen (1987) [1968]. Vox Graeca (3rd ed.). Cambridge University Press. ISBN 0521335558

関連項目

ジーメンス#モー: かつて使われた単位で、Ωを上下逆さにした「℧」を使用します。
ラウンドオメガ: 初期キリル文字の「Ѻ, ѻ」をUnicodeではこの名前で呼んでいます。
Ωカーブ: 勾配緩和や難工事箇所を迂回して建設されたため、地形図上で視ると「Ω」に類似した箇所が見られる場所を指します。

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