ある戦争

映画『ある戦争』の概要

『ある戦争』（原題: Krigen、英題: A War）は、2015年に公開されたデンマークの戦争ドラマ映画です。トビアス・リンホルムが脚本と監督を務め、国際的な評価を得ました。この映画は、アフガニスタンでの任務中に下された決断が、一人の軍人の人生と家族に及ぼす影響を深く掘り下げています。

あらすじ

物語は、デンマーク陸軍の中隊指揮官クラウス・M・ペデルセンが、アフガニスタンのヘルマンド州に駐留している場面から始まります。クラウスの部隊は、タリバンから民間人を守るという任務を遂行しています。一方、デンマークに残されたクラウスの妻マリアは、3人の子供たちの世話をしながら、夫の不在に耐える日々を送っています。

ある日、任務中に兵士たちが激しい攻撃にさらされます。部下を守るため、クラウスは敵の正確な位置を確認せずに航空支援を要請するという決断を下します。しかし、その空爆によって11人の民間人が死亡してしまいます。クラウスは帰国後、軍法会議にかけられ、空爆で民間人を殺害した罪で起訴されます。彼は法廷で、自身の決断の正当性を主張しますが、部下の一人が偽証を行ったことで、最終的に無罪となります。家族の元に戻ることはできたものの、彼は安堵感と共に、罪悪感に苛まれることになります。

キャスト

クラウス・M・ペデルセン：ピルウ・アスベック
マルティン・R.オルセン：ソーレン・マリン
ナジブ・ビスマ：ダール・サリム
マリア・ペデルセン：ツヴァ・ノヴォトニー
リズベート・ダニング：シャルロッテ・ムンク
ルトフィ・“ラッセ”・ハッサン：ダルフィ・アル・ジャブリ

製作の背景

この映画は、デンマークのテレビ局「DRテレビ」の支援を受け、デンマーク映画研究所から800万クローネの助成金を得て、ノルディスク・フィルムによって製作されました。撮影は、コペンハーゲンに加え、トルコのコンヤやスペインのアルメリアなどで行われました。特筆すべき点として、映画に登場する兵士役の多くは、実際にアフガニスタンでの従軍経験を持つデンマーク軍兵士が演じています。

評価

『ある戦争』は、公開後、多くの映画評論家から高い評価を受けました。映画批評サイト「Rotten Tomatoes」では、72件のレビューに基づき、10点満点中7.7点の評価を得ています。また、「Metacritic」では、29人の批評家によるレビューを基に、100点満点中81点という高評価を得ています。

雑誌「エンパイア」のオリー・リチャーズは、5点満点中4点をつけ、「非常に魅惑的で複雑な映画であり、『正しい答えが存在しない時、あなたはどうするのか』というシンプルな問いを投げかけている」と評しました。一方、「スラント・マガジン」のクレイトン・ディラードは、4点満点中2点と低い評価を下し、「綻びだらけで自己主張が激しく、優雅さに欠けたシナリオ」と批判しました。

受賞とノミネート

* 第88回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート

映画が提起する問題

『ある戦争』は、戦争における倫理的ジレンマ、兵士の心理的負担、そして戦争が家族に与える影響といった、重く、複雑なテーマを扱っています。観る者は、クラウスの決断の是非を問いながら、正義とは何か、責任とは何かについて深く考えさせられるでしょう。

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