ケリ

ケリ（Vanellus cinereus）

ケリはチドリ目チドリ科に属する鳥で、朝晩の水田や干潟に姿を見せることが多いです。繁殖の季節に特有の鳴き声を響かせ、観察者を楽しませています。日本地域においては、その美しい姿と活動的な性格から親しまれています。

分布

ケリは主にモンゴル高原や中国北部、日本の本州にて繁殖を行います。また、冬場には東南アジアや中国南部に渡る個体も存在します。日本では、地域によっては留鳥として繁殖し続ける個体も観察されます。

形態

ケリの成鳥は、全長約34センチメートルで、雌雄の色合いは同じです。夏羽では頭部から胸上部が灰青色で、体の上面は灰褐色、下面は白色です。胸上部と体下面には明確な黒い胸帯があり、冬羽ではこの灰青色が褐色がかります。翼は先端部分が黒く、基半分が白色と灰褐色で、飛ぶときにはそのコントラストが際立ちます。尾羽は白く、黒い帯が入っています。

幼鳥は淡褐色の綿羽に覆われており、年を重ねるにつれて色合いが変化します。若鳥は頭部と胸部が灰色で、やや褐色がかかり、目が褐色でアイリングや肉垂は小さいです。

生態

ケリは水田、畑、河原、干潟や草原など多様な環境に生息します。食性は主に昆虫やミミズ、カエル、小型の魚類などを捕食する動物食であり、時には穀物も食べることがあります。繁殖期を終えたカップルは、小さな群れではなくつがいで生きる例も見られます。

繁殖は3月から7月に行われ、抱卵は3月初旬から中旬に始まります。卵は一般に4個程度ですが、3個から5個の範囲でも確認されています。巣は水田や畦の地面に枯草を敷いて作られるため、農作業の影響を受けやすいです。巣が破壊されると、繁殖期間中にテリトリーを変更し、場合によっては最大で3回営巣を試みることもあります。

ケリは非常に警戒心が強く、外敵に遭遇すると鳴き声で威嚇し、追い払う行動をとります。そのため、日中だけでなく夜間でも鳴き声が聞かれることが多いです。この鳴き声は日本人にとって「キリッ、キリッ」「ケリッ」「ケケッ」などと聞こえ、この独特な声が和名の由来とされています。

種の保全状況

国際自然保護連合（IUCN）によれば、ケリは軽度懸念（LC）の状態とされていますが、日本国内の一部の都道府県では絶滅危惧種の指定を受けていることがあります。たとえば、福島県、埼玉県、千葉県、高知県では絶滅危惧I類に分類されています。また、青森県は危急種、岩手県や山形県などは準絶滅危惧として認識されています。

まとめ

ケリは日本の水辺環境に欠かせない面白い鳴き声を持つ鳥です。地域によってその生息状況や繁殖の特性が異なるため、今後の保護活動が期待されます。観察や環境保全に力を注いで、ケリの生息地を守っていくことが重要です。

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