こどもの城

こどもの城の歴史と変遷

こどもの城は、東京都渋谷区の青山通り沿いに位置していた、児童の健全な育成を目的とした複合施設でした。正式名称は国立総合児童センターで、厚生省（現在の厚生労働省）によって整備され、1985年11月1日に開館しました。運営は、財団法人日本児童手当協会（現在の公益財団法人児童育成協会）が行っていました。

開館までの背景

こどもの城が建設された場所は、かつて都営アパートや都電の車庫があった場所です。1979年の国際児童年を機に、21世紀を見据えた児童福祉施設の必要性が高まり、ナショナルプロジェクトとして複合施設の整備計画が持ち上がりました。その結果、こどもの城と国連大学が建設されることになりました。

施設の概要

完成したこどもの城は、地上13階、地下6階建てのミラーガラス張りの建物で、正面には岡本太郎氏のシンボルモニュメント「こどもの樹」が設置されました。館内には、青山劇場と青山円形劇場の二つの劇場、ホテル、小児科クリニック、体育室、プール、造形スタジオ、音楽ロビーなどが備えられていました。また、国立の児童館として、各地の児童館職員向けの研修や、約3500もの遊びのプログラム提供も行っていました。

開館中の運営

こどもの城は、月曜日を休館日とし、それ以外の曜日は常に開館していました。職員は週6日勤務が義務付けられており、月曜日のみが休養日となっていました。このような働き方は、開館から閉館まで約30年間続けられました。

閉館へ

2012年9月、厚生労働省は、施設の改修に120億円もの費用が必要だと発表しました。また、同様の機能を持つ児童館の整備も進み、こどもの城は役割を終えたとして、2015年2月1日に閉館しました。開館期間中には、劇場やホテルを含め、2800万人を超える人々が利用しました。

閉館後の動向

広尾病院移転計画の中止

2016年1月、東京都はこどもの城跡地に都立広尾病院を移転する計画を発表しましたが、東京都医師会からの反対や都知事の交代により計画は撤回され、広尾病院は現在地で建て替えられることになりました。

複合施設としての再開発へ

2018年9月、東京都はこどもの城をリノベーションし、都民が利用できる複合施設にする方針を表明しました。2019年には、東京都が国から土地と建物を買い取り、2020年東京オリンピック・パラリンピックのボランティア拠点として活用後、本格的な改修を行う計画が発表されました。

都民の城（仮称）の計画

東京都は、渋谷区や都議会の意見を踏まえ、青山劇場と青山円形劇場の改修を含む基本方針を策定しました。こどものための機能、プレイホールの活用、多目的ホール、スポーツ施設、女性の起業支援施設などを検討し、隣接する国連大学の用地も含めた一体的な整備も視野に入れていました。2019年9月には、東京都が国と525億円で土地と建物の売買契約を結び、「都民の城（仮称）」の館長には尾木直樹氏が就任しました。

再整備計画の変更

2020年2月には、学習支援施設やベンチャー企業支援施設などを整備する計画が発表されましたが、2021年の新型コロナウイルス感染症の流行により、施設は自宅療養者向けの酸素ステーションとして利用されることになりました。

再開発計画の見直し

新型コロナウイルスの収束が見通せない状況や、改修費用の問題から、2022年5月には再整備計画が中止されました。今後は、「神宮前5丁目地区まちづくり検討会」を設置し、より具体的なまちづくりを検討することになりました。有識者会議は、一帯の都有地約4.5ヘクタールの再開発について、一体的な活用を早期に始めるのが望ましいとする提言をまとめました。今後は、東京都と渋谷区が参加する検討会で、具体的な活用法を議論していく予定です。

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