なにわの海の時空館

大阪府大阪市住之江区の南港咲洲地区に位置していた、大阪市立の海事博物館。船舶、海運、海洋などを主題とし、2000年 7月14日に開館しましたが、経営難により2013年 3月10日に閉館しました。

建設には約176億円が投じられ、「大阪市の海の交流の歴史を伝える」ことを目的として、当時の磯村隆文市政の下で開設されました。しかし、開館当初から想定していた年間60万人の来場者数に対し、実際は初年度の20万人を最高に大きく下回り続けました。特に2008年度には10万人を割り込み、その後わずかに回復したものの、入場者の大半が無償の社会見学児童生徒で占められるという状況でした。このため、年間数億円規模の赤字を計上し続け、大阪市が過去に行った「箱物行政」や「放漫財政」の典型例の一つとして批判的に挙げられることもありました。

施設は世界的に著名な建築家ポール・アンドリューが設計を手掛け、4208枚のガラスパネルで構成されたユニークなジオデシック・ドームが特徴的でした。この建築は高い評価を受け、2002年には英国構造技術者協会から特別賞を受賞しています。建物はエントランス棟とドーム型の展示棟に分かれており、両棟は海底トンネルで接続されていました。

主な展示内容としては、「WORLD WINDOW 水平線の彼方へ」や「WORLD WINDOW キャプテンとなって」といった体験型のコーナーに加え、柳原良平氏のコレクションやバーチャル解説員などが設けられていました。開館10周年を迎えた2010年にはリニューアルも実施されています。

運営は2006年度からは指定管理者制度に移行し、大阪ガスビジネスクリエイト株式会社が担っていました。しかし、収益性の改善は見られず、継続的な赤字が問題視されました。2010年度の大阪市の事業仕分けでは「不要（廃止）」と判定され、2012年6月には副市長会議で2012年度末での廃止が正式に決定されました。

当時の橋下徹市長は本施設を市の「負の遺産」の一つとして位置づけ、閉館に向けた手続きが進められました。博物館に残された大型展示物、特に約10億円をかけて復元された菱垣廻船『浪華丸』の扱いも議論の的となりました。学術団体からは保存を求める声が上がりましたが、橋下市長は税金での存続に否定的な見解を示しました。閉館後も『浪華丸』は建物内に留め置かれましたが、これを運び出すにはガラスドームの一部解体が必要で約5億5千万円、解体処分するにも約3500万円の費用がかかることから、その取り扱いが閉館後の施設活用を難しくする一因となりました。同様に、屋外展示されていた古代船『なみはや』（船形埴輪を基に復元）も閉館後はメンテナンスが行き届かず、移設を望む声がありましたが、費用の問題から実現せず、後に撤去されています。

閉館後、施設はしばらく活用されない状態が続き、電気・機械設備は老朽化が進みました。閉館から10年間で、電気代などの維持費として大阪市が約7000万円を負担したことが判明し、「大阪最後の負の遺産」と呼ばれることもありました。売却や再利用に向けた公募も行われましたが、応募がない状態が続きました。過去にはホテルや漫画博物館など様々な活用案が報じられましたが実現には至らず、2020年の公募も新型コロナウイルス感染症の影響もあり不調に終わりました。

転機が訪れたのは2023年です。大阪市が改めて利活用事業者の募集を行った結果、観光コンサルタント会社シンフォニックスリールが事業予定者として選定され、体験型ミュージアムとして再整備し、2025年中の開業を目指す計画が発表されました。一時、保証金支払いや施設管理費の負担を巡って遅延も報じられましたが、2024年11月に保証金が支払われ、施設は同社に引き渡されました。そして2025年4月10日、「THE JEWELRY（ザジュエリー）」として一部が開業し、同年秋の全面開業を目指しています。

施設の所在地は大阪市住之江区南港北2丁目5番20号です。周辺にはアジア太平洋トレードセンター（ATC）や大阪府咲洲庁舎などがあり、大阪メトロ中央線・ニュートラム南港ポートタウン線のコスモスクエア駅またはトレードセンター前駅から徒歩圏内に位置しています。

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