ポンカン

ポンカン：芳醇な香りと柔らかな果肉が魅力の柑橘

ポンカンは、ミカン科ミカン属に分類される柑橘類の一種です。インド北部を原産地とし、明治時代に日本へ伝来しました。200グラム前後の果実は、芳香を放ち、皮が剥きやすく、柔らかな果肉が特徴です。その食べやすさと爽やかな風味から、多くの人々に親しまれています。

名称の由来

ポンカンの名前の由来は、インドの地名プーナ(Poona)に由来する「ポン」と、学名の一部であるpoonensisにあります。漢字表記の「椪」は、音読みによる当て字です。中国語では「蘆柑(ルーガン)」と呼ばれますが、福建省や広東省、台湾で使われる閩南語や潮州語では「椪柑」と表記され、「ポンカム」と発音されることから、日本語の表記も閩南語の影響を受けたという説があります。

特徴

ポンカンの果実は、150～250グラムの大きさで、完熟すると橙[[色]]に色づき、独特の芳香を放ちます。外皮は簡単に剥くことができ、内皮も柔らかく、袋のまま食べることができます。果梗部にはデコボコが現れることが多いです。収穫時期は12月から2月にかけてです。

栽培と産地

ポンカンは、インドのスンタラ地方を原産地とし、東南アジア諸国、中国南部、台湾南部、日本などで広く栽培されています。日本には明治時代に台湾から伝わったとされています。

日本では、愛媛県、鹿児島県、高知県、宮崎県、熊本県などが主な産地として知られています。特に愛媛県は、近年、収穫量において鹿児島県を大きく引き離してトップの地位を確立しています。その他、静岡県や和歌山県でも生産されています。しかし、日本の生産量は台湾からの輸入量に比べると少なく、国内需要を満たすには十分ではありません。2010年の日本のポンカン収穫量は2万7698トンで、愛媛県が34％、鹿児島県が16％を占めていました。

品種と特徴

ポンカンには、果実が大きく、収穫時期が早い高梢系と、果実がやや小さく、種が少ない低梢系があります。代表的な品種として、吉田ポンカン、今津ポンカン、太田ポンカン、森田ポンカンなどがあり、それぞれに異なる特徴を持っています。例えば、太田ポンカンは早生品種で、年内に出荷できることが特徴です。また、吉田ポンカンは、大果で、果肉がパサパサになる「鬆上がり」が少ない品種として知られています。

栽培上の注意点

ポンカンは、「鬆上がり」と呼ばれる、果実中の水分が少なくなり、果肉がパサパサになる現象を起こしやすいです。そのため、商品価値を維持するために、収穫時期を適切に管理する必要があります。また、長く樹につけたままにすると、「浮き皮果実」という現象も起こりやすくなります。これらの現象を抑制するために、早生系統の品種の栽培が推奨されています。

主要産地の状況

日本のポンカン産地は、温暖な地域に限られています。鹿児島県はかつて最大の産地でしたが、近年は愛媛県に大きく差をつけられています。愛媛県宇和島市は、日本一のポンカン産地として知られています。その他、高知県東洋町、熊本県天草諸島なども主要な産地です。屋久島も一大産地でしたが、害虫の侵入による出荷規制などにより、生産量が減少しています。

育種への利用

ポンカンは、他の柑橘類との交配によって、多くの新しい品種を生み出しました。代表的な品種としては、「不知火(しらぬひ)」、「はるみ」、「甘平(かんぺい)」などがあり、これらはポンカンが持つ優れた特性を受け継いでいます。

栄養価

ポンカンは、カリウムや葉酸を豊富に含んでいます。また、果皮の白い部分には、動脈硬化予防に効果があるとされるビタミンPが含まれています。果肉には、カロテン、ビタミンB1、β-クリプトキサンチン、ビタミンC、クエン酸なども含まれており、栄養価の高い果物です。

このように、ポンカンは、その風味、食べやすさ、栄養価の高さから、多くの人々に愛される柑橘類です。今後も、生産量の増加や新たな品種開発などを通して、その地位を確固たるものにしていくことが期待されます。

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