アプリックス

株式会社アプリックス：組み込み開発からIoTソリューションへ

株式会社アプリックスは、東京都新宿区に本社を置く組み込み開発企業です。IoT（モノのインターネット）ソリューションおよびMVNO（仮想移動体通信事業者）サービスを事業の中核として展開しています。傘下には、IoTソリューションを販売する株式会社BEAMO、MVNOサービスを提供するスマートモバイルコミュニケーションズ株式会社（スマモバ）があります。

主な事業と製品

アプリックスの主な製品は、Bluetooth対応ビーコン「MyBeacon」です。このビーコンは、パイオニアの自動車向けサービスやKDDIの動物園向けサービスなど、幅広い分野で採用されています。また、同社のIoT技術は、フランケの浄水器やネスレのコーヒーマシンなど、家電製品にも組み込まれています。

ネスレのコーヒーマシンでは、本体のWi-Fi機能から公式アプリ「ネスカフェアプリ」までを開発しており、IoT製品の組み込みからクラウドまでをワンストップで開発できる点が強みです。さらに、子会社スマモバの販路を通じて、法人向けIoT用データ通信サービス「unio」や、サブスクリプション型のLTEデータ通信機能付きドライブレコーダー「AORINO」などを販売しています。

組み込み開発企業としての歴史

アプリックスは元々、組み込み開発企業として創業しました。1997年には、家電向け組み込みJavaプラットフォーム「JBlend」を開発しました。JBlendは、2000年代初頭から2010年代初頭にかけて、世界トップシェアの携帯電話向け組み込みJavaプラットフォームとして、日本のフィーチャーフォン（ガラケー）市場で圧倒的なシェアを誇りました。特に、メーカー内製を除くと、ほぼ全ての機種で採用されたほどです。

2000年代には、ガラケーのプラットフォーム開発で急成長したメーカーとして、株式会社アクセスと並び称されました。しかし、2000年代末からのスマートフォンの普及によりガラケー市場が縮小し、アプリックスの業績は悪化しました。2010年代前半には、ゲーム会社、アニメ会社、出版社を傘下に擁するコンテンツ会社への変革を試みましたが、失敗に終わり、さらに業績が悪化しました。

IoT企業への転換と再生

2016年以降、アプリックスは継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事態に陥りました。しかし、IoTソリューションの開発に主軸を移し、2019年からは光通信グループと提携してMVNOサービスの販売を開始したことで、2020年に8期ぶりの黒字化を達成しました。2022年度には黒字を継続し、「疑義注記」を解消しました。2023年2月現在、2024年12月期を目途に上場維持基準への適合に向けた取り組みを進めています。

沿革

アプリックスの創業は1986年、当時大学生だった郡山龍（創業者）が組み込み開発企業として立ち上げました。郡山は大学卒業後、マイクロソフト株式会社（現・日本マイクロソフト株式会社）に入社し、米マイクロソフト本社でOS/2開発のプロダクトマネジャーを務めていましたが、その後アプリックスの経営に復帰しました。

1990年代から2000年代初頭にかけては、CD-Rライティングソフト「CDWriter」が主力製品でした。当時はCDドライブの普及期であったため、売り上げを大きく伸ばしましたが、2000年代に入るとOSに標準搭載されるようになり、販売を終了しました。

1997年には、KDD社などと協同でプリペイド式の電子マネー「ビットキャッシュ」を開発しました。これは、インターネットを通じたデジタルコンテンツの利用ニーズに合わせて作られたもので、1990年代後半には、アスキーサムシンググッド社の「WebMoney」と並ぶ電子マネーの代表的な商品となりました。

1997年に発表された組み込みJavaプラットフォーム「JBlend」は、2001年より各社のJava対応携帯電話で採用され、急成長を遂げました。2003年には東証マザーズに上場を果たしました。2005年にはNTTドコモが筆頭株主となり、当時、日本の全てのキャリアの全てのJava対応携帯電話でJBlendが採用されていました。当時のフィーチャーフォンにおいて、JBlendは単なるJavaプラットフォームではなく、実質的にOSの役割を担っていました。

2005年当時、世界の携帯電話の販売台数のうち約20%がJBlendを搭載しており、メーカー内製を除くと世界トップシェアを誇っていました。国内では、Java搭載携帯電話機の60%強の市場占有率を誇っていました。

2007年、アプリックスはGoogle社から、次世代携帯電話向けOS（後のAndroid）の推進団体「Open Handset Alliance」への加盟を要請されました。アプリックスは当時、JBlendの次世代基盤システムである「AMF（Aplix middleware framework）」の開発を進めていましたが、Google社が次世代OSを無償配布する方針であったため、基盤システムのライセンスで稼ぐ市場が無くなったと判断し、Open Handset Allianceに加盟しました。この際、76億円の特別損失を計上し、次世代基盤システムの開発を終了しました。

総合エンターテイメント企業への転換と挫折

2007年に発売された初代iPhone、そして2008年にGoogleがリリースしたAndroidによって、スマートフォンの普及が始まりました。フィーチャーフォンの基盤システムであったJBlendの売り上げは減少し、アプリックスは2009年12月期に赤字に転落しました。成長ドライバーを失ったアプリックスは、2009年に携帯電話ゲームコンテンツ開発会社で、フィーチャーフォン向けゲーム配信サービス最大手であったジー・モードと提携し、総合エンターテイメント企業へと変革を図りました。2009年には、携帯電話用ゲーミングコントローラ最大手の米Zeemote社を買収し、ゲーミング業界に参入しました。

2011年には、アニメ制作会社のAICを買収し、さらにジー・モードを完全子会社化しました。社名を「ガイアホールディングス株式会社」に変更し、総合エンターテイメント企業として絶頂期を迎えましたが、2011年に経営の中心人物であった宮路武が急逝。2012年にはオンラインコミック配信会社のフレックスコミックス、児童書のほるぷ出版を買収しましたが、グループは再び赤字に転落しました。その後、M2M事業を中心に据える方針に転換し、2013年に「アプリックスIPホールディングス」に商号を変更しました。

2014年にはAICとジー・モードを売却。M2M事業では、JBlendをベースとしたソフトウェア基盤技術の開発を進めましたが、海外での採用が全くなく、2014年には海外事業所を閉鎖し、JBlend事業を終了しました。この結果、売上高は著しく減少し、2015年11月には継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事態となりました。

IoT企業としての再出発

2013年にBeaconモジュール「BM1」の販売を開始し、2014年にはアップルのiBeacon認証を受けた「MyBeacon」シリーズの販売を開始しました。これにより、IoT事業を中心に据える方針に転換しました。アプリックスのBeacon端末は、パイオニアやKDDIなどの企業に採用され、経営が幾分改善しました。

2016年にはNTTドコモとの提携を終了し、非中核事業であったフレックスコミックスとほるぷ出版を売却。社名を「株式会社アプリックス」に戻しました。2019年には、光通信が筆頭株主となり、光通信の傘下でMVNOサービス「スマモバ」を運営するスマートモバイルコミュニケーションズを子会社化し、MVNO事業に参入しました。

2020年12月期には8期ぶりの黒字化を達成し、2022年12月期も黒字を継続。2023年2月には「疑義注記」が解消され、現在、上場維持基準への適合に向けて取り組んでいます。

外部リンク

株式会社アプリックス公式サイト

参照

株式会社アプリックス - Wikipedia

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