アランチーニ

イタリアのライスコロッケ：アランチーニとスプリ

イタリアには、地域によって様々なバリエーションが存在するライスコロッケがあります。最も有名なものはシチリア名物の「アランチーニ（arancini、複数形はarancini）」と、ローマ名物の「スプリ（supplì）」です。どちらも揚げたての熱々を頬張る、イタリアの定番ストリートフードとして親しまれていますが、その見た目や作り方、具材には明確な違いがあります。

シチリアのアランチーニ：オレンジ色の郷土料理

シチリアのアランチーニは、その名の通りオレンジ色をしたライスコロッケです。直径3.8cmから10cmと、大きさにも幅があります。ジャポニカ米を炊き、溶き卵、カチョカヴァッロチーズやパルミジャーノレッジャーノチーズ、塩、胡椒を混ぜて、様々な具材を包み込みます。小麦粉、溶き卵、パン粉をまぶして揚げる、定番の調理法です。

地域によって形状や具材も異なります。シチリア島南東部では円錐形に揚げられることも。西部では女性名詞として「アランチーネ（arancine）」と表記されることもあります。具材は肉とグリーンピースのトマトソース煮（アランチーネ・アッラ・カルネ）、モッツァレラチーズ（アランチーネ・アル・ブッロ）など多様で、ほうれん草やパンチェッタを使用する地域もあります。パレルモでは、アランチーニを食べる際に、スプーマ（炭酸飲料）とワインを混ぜたものを飲む習慣があり、消化促進効果があるとされています。

ナポリのアランチーニ：シンプルながらも味わい深い

ナポリのアランチーニは、シチリアのものよりも小ぶりで、ピンポン玉ほどの大きさです。具材は入れない場合が多く、シンプルに米、溶き卵、パルミジャーノチーズまたはペコリーノチーズ、塩、胡椒、トマトピューレを混ぜて丸め、パン粉をまぶして揚げます。シチリアのものとは異なる、あっさりとした味わいが特徴です。別名「アランチーニ・ディ・リゾ（米の小さなオレンジ）」や「パッレ・ディ・リゾ（米の団子）」とも呼ばれています。

ローマのスプリ：サプライズが詰まったコロッケ

ローマのスプリは、アランチーニとは異なる独自のライスコロッケです。その語源はフランス語の「Surprise（驚き）」と言われ、中に入っているモッツァレラチーズが、食べるときに糸を引いて伸びる様子が、驚きと関連付けられています。「Suppli al telefono（電話風スプリ）」とも呼ばれ、モッツァレラが伸びる様子が糸電話に似ていることからきています。

形状はツェッペリンに似ており、アランチーニと基本的な調理法は似ていますが、サフランは使用しません。また、アランチーニがチーズを練りこむのに対し、スプリはモッツァレラチーズを具材として使用します。サイズもアランチーニの方が大きく、握り拳サイズほどになります。ローマでは、「アランチーニはシチリアでしか食べられない」と言われるほど、スプリが広く親しまれています。ピザ屋などで定番メニューとして提供され、前菜として食べることが一般的です。

まとめ

アランチーニとスプリは、どちらもイタリアのライスコロッケですが、地域によって形状、サイズ、具材、作り方などが異なり、それぞれに独自の特色があります。それぞれの地域を訪れた際には、ぜひ地元ならではのライスコロッケを味わってみてください。揚げたての熱々を頬張れば、イタリアの豊かな食文化を肌で感じることができるでしょう。

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