アルピナ

アルピナ：BMWを凌駕する、控えめな匠の技

アルピナ社(Alpina Burkard Bovensiepen GmbH & Co.)は、ドイツを代表する自動車メーカーであり、同時にBMWを専門とするチューナーとして世界的に知られています。BMW車をベースに、独自の技術とデザインを融合させた高性能車を製造・販売するだけでなく、アフターマーケット向けのチューニングパーツやドレスアップパーツも提供しています。意外なことに、ワイン販売も手がける多角経営企業です。

アルピナ車の魅力：控えめなスポーティさ

アルピナ車の最大の特徴は、その控えめなスポーティさです。派手なエアロパーツではなく、洗練されたデザインと細部へのこだわりで、高いパフォーマンスを主張します。BMW本社公認のチューナーであるため、アルピナ車はBMWの保証を受けることも可能です。

外見上のBMW車との違いは、いくつか挙げられます。まず、5ナンバーサイズのアルピナ車は存在しません。また、独自のエンブレム（ステアリング、ホイール、シートバックなどに使用）や、アルピナラインと呼ばれるボディサイドのデコレーションラインが特徴です。さらに、独特の細い20本のスポークを持つアルミホイール（ALPINA CLASSIC Styling I～IIIなど）も、アルピナ車ならではのアイデンティティです。かつてはBMW製のホワイトボディにアルピナがパーツを組み付ける生産工程を取っていましたが、現在は年間約1700台を、熟練の職人による手作業で生産しています。そのため、生産台数の拡大は難しく、現在の品質を維持するために、増産は予定されていません。

最高速度ではなく「最高巡航速度」という表現を用いるのもアルピナの特徴です。これは、その速度で長時間走行できることを意味します。アルピナは「Understatement（控えめ）」を美徳とし、性能を主張するのではなく、その実力を静かに示す車造りをしています。

アルピナのエンブレムは、創業当初のチューニング技術を象徴しています。ダブルチョークウェーバーのエアファンネルとクランクシャフトをモチーフに、赤（情熱）と青（知性、高い志）を配色しています。

歴史：タイプライターメーカーから名門チューナーへ

アルピナは、もともと事務機器メーカーとしてスタートしました。1961年、創立者の息子であるブルカルト・ボーフェンジーペンが自身のBMW 1500のキャブレターをウェーバー製に変更したことが、アルピナの始まりです。1964年には、その高いチューニング技術がBMW本社で認められ、BMW公認チューナーとなります。

1965年には、アルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン合資会社が設立されました。1968年からモータースポーツにも参戦し、1970年にはヨーロッパツーリングカー選手権などを制覇するなど数々の栄光を手にしました。しかし、1977年にレース活動から撤退し、市販車開発に注力するようになりました。1983年には、自動車メーカーとして正式に登録されています。

1980年代には、ドイツツーリングカー選手権(DTM)に参戦し、数々の優勝を収めました。1988年にはモータースポーツから完全撤退し、市販車に集中、その後も、アルピナ・シフトトロニックやアルピナ・スイッチトロニックなど、革新的な技術を投入し続けました。2002年には北米市場への進出に成功し、2005年には世界最速水準のスポーツカーとなるB5を開発しました。2022年には、BMWグループにALPINAブランドの商標権が譲渡されることが発表され、2025年末をもってアルピナ社本体でのコンプリートカーの開発・生産・供給は終了します。2026年以降はBMW直轄のサブブランドとして継承される予定です。

製品：BMWを凌駕する高性能モデル

アルピナは、長年に渡り数々のBMWをベースとしたモデルを開発してきました。初期のモデルから、最新のモデルまで、その性能と品質は常に高い評価を得ています。代表的なモデルとしては、B6 2.8、B7ターボ、B10 Bi-Turboなど、数多くの名車が存在します。それぞれのモデルは、BMWの優れたプラットフォームを基に、アルピナ独自の技術によって、パワー、ハンドリング、快適性を大幅に向上させています。アルピナ独自のチューニング技術により、BMWの性能をはるかに超える高性能を実現しています。

日本での販売

日本では、ニコル・オートモビルズが総代理店として、BMWジャパンのディーラーを通じてアルピナ車が販売されています。1980年代から1990年代前半にかけては、BMW MやACシュニッツァーといった他チューナー車と比較されることもありましたが、アルピナは独自の地位を確立しています。

アルピナは、控えめなデザインの中に秘めた高い技術力と、長い歴史の中で培われた伝統が魅力のブランドです。これからも、BMWをベースに独自の進化を続けることでしょう。

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