イントレランス

映画『イントレランス』の概要

『イントレランス』（原題: Intolerance）は、1916年に公開されたアメリカのサイレント映画で、監督はD・W・グリフィスが務め、主演はリリアン・ギッシュです。この作品は、製作費38万5000ドルをかけた壮大なものであり、巨大なセットや多くのエキストラを動員して製作されました。

製作背景と特徴

本作は、往年の名作『國民の創生』に続く超大作として製作されました。グリフィスは、映画史において新たな映画文法を確立するため、革新的な撮影技術を積極的に取り入れました。4つの物語が同時進行するという構成や、クロスカッティング、クローズアップ、移動撮影などが特徴で、その結果、映画が持つ表現の幅を大きく広げました。このような試みが、後の映画制作に与えた影響は計り知れません。

物語の概略

映画は不寛容をテーマとして、以下の4つのエピソードで構成されています:

1. バビロニア編（紀元前539年）
新バビロニアの王ナボニドゥスの息子ベルシャザルが中心となり、王国が外敵ペルシャに襲われるストーリーです。彼の愛する山の娘との関係や、国を守るための戦いが描かれています。物語のクライマックスでは、彼の信頼する人々の裏切りによって城が攻め落とされ、栄華と悲劇の両面が表現されます。

2. ユダヤ編（西暦27年頃）
イエス・キリストが実った甘いぶどうの実の描写を通じて、不寛容による苦悩を受ける女性の物語が展開されます。彼は人を救おうとしますが、結局迫害され、極刑にされる運命に直面します。

3. フランス編（1572年）
カトリックとプロテスタントの激しい対立を背景に、若い情熱の物語が繰り広げられます。カトリーヌ・ド・メディシスの策略により、ユグノー派とカトリックの人々が混乱と悲劇の中で交わる運命に導かれます。

4. 現代アメリカ編（1914年頃）
資本主義色の強いアメリカで労働者が直面する不正義や悲劇を描いた物語です。金銭的利益が人間の倫理を蔑ろにし、家族や仲間を失った人々の葛藤とその後の行動が中心です。

公開と評価

公開当初、作品は斬新さによって受け入れられず、興行的には落胆の結果となりました。批評家たちには評価されたものの、観客との間に溝ができてしまいました。しかし、この作品は後の映画製作者に多大な影響を及ぼしました。

特にソビエトのモンタージュ理論に触れた映画作家たちは、本作の技術や構成から影響を受け、その後の映画史を形作る一因となりました。

影響と遺産

作品公開から数年後、日本での上映も行われ業界に影響を与えました。大ヒットした日本の再編集版は、映画の技術的な価値を再認識させるものでした。このように『イントレランス』は、映画制作において革新をもたらし、映画史における重要な作品として位置付けられています。

今日でも、本作は映画文法の礎を築いた名作として、名高く、上映バージョンの異なる多様な形で存在しています。映画の冒険と人類の不寛容の対峙は、現代においても考えさせられるテーマです。

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