ウイザート

ウイザート：クラシックへの夢なき11連勝

ウイザートは、昭和20年代後半から活躍した日本の競走馬です。その名を競馬史に刻むことになったのは、圧倒的な強さによる11連勝という偉業です。3歳から4歳にかけて達成したこの連勝劇は、中央競馬における連勝記録タイ記録として今も語り継がれています。

ウイザートのキャリアは、3歳7月の札幌競馬場でのデビュー戦から始まりました。初戦は惜しくも2着に終わりますが、続く未勝利戦で勝利を収めると、騎手・浅見国一とのコンビで快進撃が始まります。オープン戦では6馬身差という圧勝劇を演じ、レコードタイムでの勝利も重ねました。当時の関西を代表する強豪馬たちを相手に、次々と勝利を重ねていきます。3歳時には、西の3歳王者決定戦である阪神3歳ステークスも制覇。8戦7勝という驚異的な成績を残し、その名をとどろかせました。

しかし、ウイザートには大きなハンデがありました。それはクラシック登録がなされていなかったことです。そのため、4歳になっても、クラシックレースへの出走資格がありませんでした。それでも、ウイザートはオープン戦で連勝を続けました。4歳初戦はレコードで圧勝。ハンデキャップ競走では、他の馬をはるかに凌駕する64kgの斤量を背負いながらも、強豪ハイレコードをクビ差で退けました。そして、4月末のオープン戦での勝利が、ウイザートの11連勝達成を意味しました。クリフジ、トサミドリと並ぶ偉業達成です。

ウイザートの連勝記録は、皐月賞から10日後に行われた競走でストップします。圧倒的1番人気に支持されながら3着に敗れ、連勝は途絶えました。その後も勝利を重ねる場面もありましたが、以前のような勢いは見られなくなっていきます。夏には札幌記念に出走しますが、1歳上の名馬トサミドリに敗れ、3着に終わります。秋にはオープン戦とセントライト記念で勝利を挙げますが、毎日王冠では9着と大敗を喫します。その後はオープン平場戦などで勝利を重ねるものの、大きなタイトルを獲得することなく、5歳夏の函館記念4着を最後に競走馬としてのキャリアを終えました。

種牡馬としては、宮崎県と北海道日高で供用されましたが、大きな成功は収められず、1959年3月には馬伝染性貧血により殺処分となりました。ウイザートの短くも輝かしい競走馬としての生涯は、多くの競馬ファンに惜しまれつつ幕を閉じました。浅見騎手はウイザートのクラシック登録があれば三冠の可能性もあったと回想しています。ウイザートのライバルとして3歳時に3戦全勝したハイレコードは、後の皐月賞2着、菊花賞優勝馬となりました。ウイザートの血統には、当時のリーディングサイアーであるセフトや名牝系の祖であるシルバーバットンが含まれており、その血統背景からも、その能力の高さが伺えます。ウイザートの従弟にあたるダイナナホウシュウも、11連勝を達成しています。

ウイザートの物語は、競馬小説家・新橋遊吉の作品にも大きな影響を与えました。新橋はウイザートの強さと、クラシックへの挑戦が叶わなかった悲劇性に心を奪われ、自身の作品でウイザートをモデルにした馬が登場するなど、ウイザートへの敬意と悲しみを作品に込めています。ウイザートは、その強さと悲劇性によって、今も多くの競馬ファンの記憶に刻み込まれているのです。

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