ウチダザリガニ

ウチダザリガニ (Pacifastacus leniusculus trowbridgii)

ウチダザリガニは、エビ目でザリガニ科に属する淡水ザリガニです。その名前は、北海道大学の内田亨教授がこの種の標本を用いて種の同定を助けたことから付けられました。このザリガニは北米が原産地であり、英語名は「シグナル・クレイフィッシュ」です。日本には天然分布がなく、外来種として環境省により特定外来生物に指定されているため、特に注意が必要です。

分布と生息環境

ウチダザリガニはアメリカ合衆国北西部、具体的にはコロンビア川水域やミズーリ川源流部が原産地とされています。また、カナダのブリティッシュコロンビア州にも生息しています。日本では、北海道や福島県をはじめとし、長野県や滋賀県、千葉県などの各地で確認され、特に淡海湖には長年定着しています。

このザリガニは冷水性の湖や河川に適応し、非常に広範囲な温度耐性を持っています。低水温ではマイナス33度にも耐えることができますが、高水温でも30度に一週間耐えることが可能です。特に、コロンビア川では汽水域での生息も確認されており、温度や水質に対する適応力が強いことが伺えます。

形態

ウチダザリガニは体長が約15cmに達し、他のザリガニと比べてやや大型です。特徴的な姿勢を持ち、第一胸脚の持つ可動肢には白い斑点があります。ただし、若齢幼体の段階ではこれらの特徴がはっきりとしないこともあります。一般的に、緑褐色の体色が多いですが、環境によって青褐色なども見られます。

食性と繁殖

このザリガニは雑食性であり、魚類や底生生物、水草などを食べることが知られています。また、共食いをすることもあり、生存競争が激しい環境ではこの行動が見られることがあります。繁殖期は10月で、雌は100から500個の卵を抱えることができます。幼体は翌春から初夏にかけて放出され、成長します。一般に、ウチダザリガニの寿命は約10年とされ、天敵としてはナマズやウナギ、様々な鳥類が挙げられます。

日本における移入の歴史

ウチダザリガニは1926年にアメリカから北海道に導入され、その後全国の水産試験場に配布されました。最初の放流からすでに80年以上が経っており、現代ではその影響が徐々に明らかになっています。導入に伴い、ウチダザリガニは多くの在来生物と生息域での競争を引き起こし、ニホンザリガニなどの固有種に対する脅威となっています。

外来種問題とその対策

ウチダザリガニはその生態系に対して深刻な影響を及ぼしており、特に水生植物の食害や在来種との競争が問題視されています。特に釧路市春採湖では、ウチダザリガニによる水草の損失が問題となっており、補助的な産卵床を設置するなどの対策が取られています。また、ウチダザリガニによって媒介される病原体が在来ザリガニに影響を与える可能性も懸念されています。そのため、駆除活動がさまざまな地域で行われ、捕獲されたザリガニは環境保全活動に活用されています。

近年では、観光資源としての活用も進んでおり、阿寒湖では「レイクロブスター」として料理提供されています。外来種としての問題がある一方で、地域活性化の一環として利用されるケースも増えています。

まとめ

ウチダザリガニは、もともとは北米から日本に移入された外来種で、現在ではその生態系に多くの影響を与えています。外来生物法に基づく指定により駆除が行われている中で、地域と調和しながら持続可能な対策が求められています。特定外来生物としての認識から、これからの管理には地域の理解と協力が不可欠です。

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