春採湖

春採湖：北海道釧路市の貴重な汽水湖

春採湖は、北海道釧路市の市街地東部に位置する、面積0.36平方キロ[[メートル]]、周囲4.7キロ[[メートル]]の湖です。海岸から近く、春採川を通じて海と繋がっており、海水が入り込む汽水湖という特徴を持っています。水深は平均5.2メートルほどですが、過去には水質汚染や埋め立てによって水深の変化がありました。

海跡湖としての歴史と地形

春採湖は、海面が下降した際に陸地に取り残された海跡湖です。その成り立ちから、湖底には歴史が刻まれており、かつては9メートルを超える深さがあった場所も、現在は浅くなっています。これは、昭和30年代頃までの炭鉱排水や、昭和30年代から80年代頃までの生活排水流入が原因と推測されています。湖の北岸には釧路市立博物館、国の史跡である鶴ケ岱チャランケ砦跡、春採公園などがあり、歴史と自然が調和した景観を形成しています。

水質と環境保全への取り組み

かつて春採湖は、周辺からの生活排水の影響で深刻な水質汚染に苦しんでいました。1985年には、日本の湖沼水質ワースト2にランクインするほどでしたが、釧路市による下水道整備などの環境改善策により、水質は徐々に改善されました。しかし、湖底にはいまだにヘドロが堆積しており、硫化水素が発生する無酸素状態の層が存在します。このため、魚類の生息には影響を与え続けています。

この問題に対処するため、1993年には潮止め施設が、2009年には潮止め堰が設置されました。これにより、海水の逆流を防ぎ、表層水と下層水の混合を促進することで、水質改善に寄与しています。2016年の調査では、化学的酸素要求量（COD）が環境基準値を下回るなど、水質の改善が確認されています。

生物の多様性と保全

春採湖には、マツモやヒシなどの水草が生育しています。しかし、イトクズモやヒロハノエビモなど、かつて生育していた水草の一部は絶滅したと考えられています。水鳥ではマガン、カイツブリ、オオバンなどの繁殖が確認されており、渡り鳥の中継地としても重要な役割を担っています。魚類はワカサギ、ジュズカケハゼ、ギンブナなどが多く生息し、国の天然記念物に指定されているヒブナも生息しています。

ヒブナは、かつて水質悪化によって個体数が減少しましたが、近年は回復傾向にあります。しかし、産卵場所となる水草の減少が課題となっており、現在は人工水草を設置することで産卵場所の確保に努めています。また、外来種のウチダザリガニの増加も問題となっており、駆除対策が実施されています。

ヒブナの起源と遺伝子研究

春採湖のヒブナは、1937年に国の天然記念物に指定されました。しかし、その起源については長年謎に包まれていました。2022年、京都大学や釧路市立博物館などの研究チームが、約100年前に放流された金魚が野生のフナと交雑してヒブナが誕生したという研究成果を発表しました。この研究成果は、春採湖のヒブナを理解する上で重要な知見となります。

春採湖の未来

春採湖は、歴史と自然が織りなす貴重な空間です。水質汚染や外来種問題など、課題は残っていますが、継続的な保全活動によって、この豊かな生態系を守り、未来へと繋いでいくことが重要です。市民と行政、研究機関の連携が、春採湖の未来を左右するでしょう。

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