エリマキトカゲ

エリマキトカゲ

エリマキトカゲ（学名：Chlamydosaurus kingii）は、アガマ科に分類されるトカゲの一種であり、エリマキトカゲ属を構成する唯一の種です。オーストラリア北部やニューギニア島南部に生息し、特徴的な首のフリルがよく知られています。

分類

1825年、イギリスの動物学者ジョン・エドワード・グレイによって記載されました。属名のChlamydosaurusは、ギリシャ語の「マント」を意味する「chlamys」と、ラテン語の「トカゲ」を意味する「saurus」に由来します。種小名のkingiiは、採集を行った探検隊の隊長キングにちなんでいます。

エリマキトカゲはアガマ科のヒゲトカゲ亜科に分類され、遺伝学的研究によると、約1000万年前に他の種から分岐したと考えられています。ミトコンドリアDNAの分析では、オード川とカーペンタリア湾によって区切られた3つの系統が確認されています。これらの系統は、氷河期に海面が低下し、陸橋が形成された際にニューギニアに移動したと考えられています。

形態

エリマキトカゲは全長約90cm、体重約600gに成長します。オスの方がメスよりも大きく、フリルや頭も比例して大きいです。体色は灰色、茶色、オレンジがかった茶色、黒など様々で、フリルの色は赤、オレンジ、黄色、白などが見られます。フリルは普段は首に沿って折りたたまれていますが、広げると直径30cmほどにもなります。

特徴的なフリルは、軟骨のような組織と棒状の舌骨によって支えられており、威嚇やコミュニケーションの際に使用されます。フリルはまた、音を集めるための指向性マイクのような機能も持つと考えられています。

分布と生息地

エリマキトカゲは、オーストラリア北部（西オーストラリア州キンバリー地域からクイーンズランド州ヨーク岬半島まで）とニューギニア島南部に分布しています。サバンナや硬葉樹林を好み、水はけが良く、樹木が多い標高の高い場所に生息します。地上に植生が少ない場所も好みます。

生態

エリマキトカゲは昼行性で樹上性の動物であり、一日の大半を木の上で過ごします。地上に降りるのは、餌を探したり、移動したり、社会的な交流を行う時です。オスはメスよりも活動的で、行動範囲も広いです。

エリマキトカゲは雨季に活動が活発になり、地面近くで見られることが多くなります。乾季には高い場所にある木の枝に隠れて生活します。乾季は休眠状態には入りませんが、エネルギー消費を抑えます。

食性は主に昆虫などの無脊椎動物で、シロアリやアリ、ムカデなどを捕食します。捕食の際には、木の上から獲物を探し、見つけると二足歩行で突進し、四足歩行で捕獲します。二足歩行は、逃げる際にも使用します。

天敵は猛禽類や大型のトカゲ、ヘビなどです。脅威を感じると、フリルを広げて体を大きく見せ、口を開けたり、音を立てたりして威嚇します。繁殖期は乾季の終わりから雨季の初めにかけてで、メスは浅い穴に卵を産みます。一度に複数の卵を産み、孵化したばかりの子供はフリルが小さいです。

脅威と保全

国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストでは、エリマキトカゲは低危険種に分類されていますが、一部地域では個体数が減少している可能性も指摘されています。ペットとしての取引も行われており、野生個体群が脅かされる可能性もあります。オーストラリアとパプアニューギニアでは輸出が禁止されていますが、インドネシアでは保護種に指定されています。

飼育下での繁殖は難しいため、市場に出回る個体の中には野生個体が含まれている可能性もあります。また、野良猫などによる捕食の被害も報告されています。

人間との関係

エリマキトカゲは、オーストラリアを代表する動物の一つとして知られています。考古学的な証拠から、古代には一部の先住民によって食用とされていたようです。19世紀には生きた個体がイギリスに持ち込まれ、そのユニークな姿が注目されました。日本でもペットとして人気があり、飼育下での繁殖個体も流通しています。

エリマキトカゲは、その特徴的な外見から映画やテレビ番組などのメディアにも多く登場しています。1993年の映画『ジュラシック・パーク』では、エリマキトカゲのようなフリルを持つ恐竜が登場しました。また、オーストラリアの2セント銅貨にもデザインが採用されています。

日本では1984年に三菱自動車のテレビCMに登場し、一時的にブームを巻き起こしました。このブームの際には、エリマキトカゲをテーマにした歌も多数作られました。しかし、当時のブームで輸入された個体の中には、正規の輸入手続きを経ずに持ち込まれたものも多く、問題となりました。

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