オーステン

オーステン短機関銃：第二次世界大戦下のオーストラリア製兵器

オーストラリア製のオーステン短機関銃は、9x19mmパラベラム弾を使用するサブマシンガンとして第二次世界大戦中に使用されました。その歴史、設計、運用、そしてその後の経緯を詳しく見ていきましょう。

開発背景と設計

第二次世界大戦中、イギリスは膨大な軍需物資を必要としていました。そのため、多くの物資をイギリスやアメリカからの輸入に頼っていたオーストラリアは、供給不足に直面し、自国の兵器を設計・製造せざるを得ませんでした。

オーステンの設計には、イギリス軍が広く使用していたステン短機関銃が大きな影響を与えました。銃身や射撃機構などはステン銃をベースにしながらも、前方に折り畳むスケルトン型の銃床など、ドイツのMP40からのデザイン要素も取り入れています。

特筆すべきは、オーステンの一部部品にダイカスト成型が用いられた点です。弾倉、銃床の一部、マガジンハウジングなどは、ダイカスト技術によって製造されました。これは、オーステンを製造したメルボルンのダイカスター株式会社とシドニーのW・T・カーマイケル株式会社が、ダイカスト技術に精通していたためです。マガジンローダーも同様にダイカスト成型でした。

オーステンとオーウェン・マシンカービン

オーステンは、同時期に開発されたオーウェン・マシンカービンと併用されましたが、信頼性においてオーウェンには及ばず、それほど広く普及しませんでした。オーウェンが1960年代まで使用されたのに対し、オーステンは1945年以降、他の紛争で使用されることはありませんでした。

オーステンMk.2

1946年には、約200挺のオーステンMk.2が製造されましたが、同年中に運用から外されました。Mk.2では、後部グリップ、機関部、エンドキャップが一体のダイカスト製となり、前部グリップとマガジンハウジングのダイカスト部品が大型化してフロントキャップを兼ねるようになりました。また、銃剣ラグが追加され、撃針はボルト前面に固定式となりました。

構成と特徴

オーステンの構成要素は、ステンMk.2とMP40の設計から多くの部分を借用していました。銃身、機関部、トリガーグループなどはステンMk.2を、折畳式銃床、独立した撃針、伸縮式覆いを備えたボルトなどはMP40を参考としています。機関部はステンと互換性がありましたが、レシーバー後半はやや長くなっていました。

特徴的なのは、MP40を彷彿とさせる2つのピストルグリップです。グリップ形状もMP40とよく似ていました。折り畳み式のパイプ状銃床には、分解用工具とクリーニングロッドが収納されていました。

オーステンは、ステンと同じくセレクティブファイア機構を備え、安全、セミオート、フルオートの3段階の射撃モードを選択できました。フルオート射撃時の発射速度は毎分500発でした。Z特殊部隊向けには消音器付きのモデルも設計されていました。

まとめ

オーステン短機関銃は、第二次世界大戦下のオーストラリアにおける、戦時下の急造兵器開発の事例として注目に値します。ステン銃をベースにしながらも、ダイカスト技術やMP40からのデザインを取り入れるなど、その設計には独特の特徴が見られます。しかし、オーウェン・マシンカービンには及ばない信頼性と、短期間の使用期間は、この兵器の限界を示しています。

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