オーウェン・マシンカービン

オーウェン・マシンカービン：オーストラリアが生んだ個性的な短機関銃

オーウェン・マシンカービン、あるいはオーウェン・ガンとして知られるこの短機関銃は、オーストラリアで開発された独特の武器です。その特徴的な外観は、他の短機関銃とは一線を画し、すぐに識別できるほどです。銃の上部に配置された弾倉、まるで水道管を組み合わせたかのような独特なレシーバー、そして全体的なシルエットは、一度見れば忘れられない印象を与えます。

型破りな設計と高い信頼性

オーウェン・マシンカービンは、シンプルブローバック方式とオープンボルト撃発という、当時としては標準的な機構を採用していました。しかし、その内部構造は他の短機関銃とは大きく異なっていました。ボルトはレシーバーの中央に収納され、外部への開口部がありません。円盤状の隔壁によってボルトの作動空間が区切られ、砂塵などの異物が機関部へ侵入するのを効果的に防いでいました。

弾倉は銃の上部に、排莢口は下部に配置されているため、重力も利用したスムーズな給弾と排莢を実現していました。異物が侵入した場合も、容易に排出される設計でした。照準器は弾倉の右側にオフセットされ、これもオーウェン・マシンカービンの特徴的な部分です。

構造の簡素化を重視した設計も、この銃の信頼性向上に貢献しています。空薬莢などの排出機構は弾倉に組み込まれており、分解清掃も容易に行えます。銃身、ボルト、コッキングハンドルを簡単に取り外せるため、メンテナンスは迅速かつ簡便でした。テストでも高い耐久性を示し、故障の少なさから、オーストラリア兵の間で高い信頼を得ました。第二次世界大戦だけでなく、朝鮮戦争やベトナム戦争でも使用され、その実力を証明しました。

開発秘話：エヴリン・オーウェンと試行錯誤

オーウェン・マシンカービンの開発には、エヴリン・オーウェンという人物が深く関わっています。幼い頃から銃器に興味を持ち、旋盤加工の技術を習得した彼は、1931年から短機関銃の開発に着手しました。1938年に完成させた試作銃は.22LR弾を使用するものでしたが、オーストラリア軍からは威力不足などを理由に不採用となりました。

しかし、オーウェンは諦めませんでした。彼はより強力な.32ACP弾を使用する改良型試作銃を製作し、1940年にはオーストラリア陸軍に入隊しました。その後、偶然の出会いをきっかけに、オーストラリア陸軍発明局（AIB）に転属。そこで、彼は更なる改良を重ね、最終的に9mmパラベラム弾を使用するモデルが採用されました。1941年に行われた軍のテストでは、イギリスのステン短機関銃、アメリカのトンプソン・サブマシンガン、ドイツのMP18といったライバル機を凌ぐ精度と耐久性を示し、採用が決定しました。

量産と実戦投入

1942年3月、ライサート鉄鋼でオーウェン・マシンカービンの量産が開始されました。太平洋戦争の勃発を受け、オーストラリア軍はジャングルでの戦闘に適した短機関銃を必要としており、オーウェン・マシンカービンはまさにそのニーズに合致しました。1943年2月までに28,000挺のOwen Mk.1が製造され、その後も改良型であるOwen Mk.2/3が製造され、終戦までに5万挺以上が生産されました。

ニューギニアでの日本軍との戦闘では、接近戦が多いジャングル環境においてオーウェン・マシンカービンは高い戦闘能力を発揮しました。初期の弾薬供給の問題も解決され、オーストラリア軍だけでなく、ニュージーランド軍やアメリカ軍でも使用されました。戦後も、朝鮮戦争やベトナム戦争でオーストラリア軍によって使用され続けました。

後継機とオーウェン・マシンカービンの遺産

1960年代、F1サブマシンガンが配備されたことで、オーウェン・マシンカービンは軍役から退きました。F1サブマシンガンは、オーウェン・マシンカービンと同様に銃の上部から弾倉を装着し、照準器を右側にオフセットする設計でしたが、レシーバーの密封構造は採用されていませんでした。そのため、過酷な環境下での信頼性という点ではオーウェン・マシンカービンに及ばなかったとされています。

オーウェン・マシンカービンは、その独特な設計と高い信頼性、そして過酷な戦場で実証された性能によって、オーストラリアの兵器史にその名を刻みました。そのシンプルながらも堅牢な設計は、多くの兵士から信頼され、長きに渡り使用され続けた理由と言えるでしょう。

採用国

オーストラリア
インドネシア
オランダ
ニュージーランド
ローデシア
イギリス

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