オーストリアの歴史

オーストリアの歴史：799年から現代まで

オーストリアの歴史は、799年、カロリング朝のカール大帝が東方辺境伯領（オストマルク）を創設したことに始まります。現在のオーストリア上部・下部州に相当するこの地域は、東方からの異民族の侵入を防ぐ緩衝地帯として機能しました。その後、907年のマジャル人侵入など幾多の困難を乗り越え、976年にはバーベンベルク家がオーストリア辺境伯領を継承、版図を拡大していきます。

バーベンベルク家時代には、神聖ローマ帝国皇帝との関係や叙任権闘争なども経験、勢力拡大と維持に苦心しました。1156年、特権文書「Privilegium Minus」によってオーストリアは公国として独立性を高め、ウィーンの発展にも繋がりました。しかし、1246年にバーベンベルク家が断絶すると、オーストリアはドイツ諸侯の争奪の的となり、最終的にハプスブルク家の支配下に入ります。

ハプスブルク家の支配は、1278年から1918年まで実に640年間も続きました。この間、ハプスブルク家は神聖ローマ帝国皇帝を事実上世襲するようになり、勢力圏をヨーロッパ各地に拡大、「太陽の沈まない帝国」と呼ばれるまでに至ります。しかし、宗教改革や三十年戦争など、帝国は内憂外患に苦しみます。

1806年、神聖ローマ帝国が解体すると、オーストリア帝国が成立。クレメンス・フォン・メッテルニヒによるウィーン体制は、ナポレオン戦争後のヨーロッパ秩序を維持しようとしましたが、1848年の革命によって崩壊しました。その後、1866年の普墺戦争での敗北によってドイツ統一から除外され、オーストリアは孤立します。

1867年、アウスグライヒ（妥協）によってオーストリア・ハンガリー二重帝国が成立。オーストリア皇帝兼ハンガリー王であるフランツ・ヨーゼフ1世の下、外交・軍事・財政は共通しつつ、内政は各国の議会が担う同君連合体制となります。しかし、この体制は多民族国家としての矛盾を抱え、民族主義の高まりによる内紛が頻発しました。

1914年、サラエヴォ事件をきっかけに第一次世界大戦が勃発。敗戦後、オーストリア・ハンガリー帝国は崩壊し、1918年、オーストリア共和国が成立します。しかし、世界恐慌やナチス・ドイツの台頭により、1938年にはオーストリアはナチス・ドイツに併合（アンシュルス）されました。

第二次世界大戦後、オーストリアは連合国の占領下に入りますが、1955年に永世中立国を宣言し、独立を回復。現在に至るオーストリア共和国となりました。21世紀に入ると、政治不安定や汚職問題など、新たな課題に直面しています。

年表

古代～フランク王国
前14年：ローマ帝国の領土となる
799年：カール大帝がオストマルク辺境伯領を設置

神聖ローマ帝国（オーストリア公国）時代
976年：バーベンベルク家のオーストリア辺境伯領
1156年：オーストリア公国となる
1246年：バーベンベルク家断絶
1278年：ハプスブルク家による支配開始

神聖ローマ帝国（オーストリア大公国）時代
1359年：オーストリア大公を称する
1439年：ハプスブルク家が神聖ローマ皇帝を事実上世襲
1529年、1683年：オスマン帝国によるウィーン包囲
1618年～1648年：三十年戦争
1740年：オーストリア継承戦争

オーストリア帝国時代
1804年：オーストリア皇帝フランツ1世即位
1806年：神聖ローマ帝国解体、オーストリア帝国へ
1814年：ウィーン会議
1866年：普墺戦争敗北

オーストリア＝ハンガリー二重帝国時代
1867年：アウスグライヒにより二重帝国成立
1908年：ボスニア・ヘルツェゴビナ併合
1914年：サラエヴォ事件、第一次世界大戦勃発

大戦間期・共和政時代
1918年：オーストリア共和国成立、ハプスブルク家支配崩壊
1938年：ナチス・ドイツによる併合

戦後
1945年：連合国占領
1955年：独立、永世中立国宣言
1995年：EU加盟

21世紀
2010年代後半～：政治不安定、汚職問題発生

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