オートマチックトランスミッションフルード

オートマチック[[トランスミッション]]フルード（ATF）詳解

はじめに

オートマチック[[トランスミッション]]フルード（ATF）は、自動変速機をスムーズに作動させるために不可欠な油圧作動油です。一般的に「オートマオイル」や「ATオイル」などと呼ばれ、赤色、緑色、青色などに着色されています。エンジンオイルと異なり、使用量は6～10リットルと多いため、交換時には注意が必要です。

ATFの役割と特徴

ATFは、変速機の歯車の潤滑、油圧バルブの作動、ブレーキバンドの摩擦、トルクコンバーターの作動など、多様な役割を担っています。そのため、通常のギアオイルよりも高度な性能が求められます。潤滑作用に加え、油圧作動に関わる側面も重要であることから、「オイル」と「フルード」の両方の呼称が用いられます。

ATFは、各メーカーや車種によって異なるトランスミッションの仕様に合わせて最適化されており、非常に専門性の高いオイルです。近年では、パワーステアリングの作動油や、一部の四輪駆動車のトランスファーオイル、さらには特定のマニュアルトランスミッションのギアオイルとしても使用される場合があります。また、二輪車のサスペンション用フォークオイルとしても利用されるケースもあります。

無段変速機（CVT）には、ATFと類似したCVTフルード（CVTF）が使用されますが、CVTの構造と要求性能がATとは大きく異なるため、混用は厳禁です。ただし、一部のハイブリッド車では、ATFが指定されている場合もあります。

ATFの成分と規格

現代のATFは、防錆剤、消泡剤、洗浄剤、耐摩耗剤、酸化防止剤など、様々な添加剤が配合されています。また、DEXRON、Merconなど、多くの規格が存在し、車種ごとに適切な規格が指定されています。これらの規格は、異なるメーカーが同じ性能を満たすために、異なる化学物質を使用している場合もあります。

近年は化学合成油をベースとしたATFが主流となっており、鉱物油ベースのものよりも耐熱性、耐酸化性、せん断抵抗性に優れています。不適切なATFを使用すると、トランスミッションの故障につながる可能性があるため、車両の取扱説明書に記載されている推奨規格に従うことが重要です。

代表的なATF規格としては、以下のようなものがあります。

ATF+4 (ダッジ、ジープ、クライスラー)
Mercon V (多くのフォード車)
Dexron VI (多くのGM車)
Dexron III Type H (旧世代のトヨタ車など)
ATF-Z1 (旧ホンダ車)
ATF DW-1 (ホンダ車)
SP-III (三菱車、ヒュンダイ車、起亜車)
JASO 1A (日本車全般)
T-IV (トヨタ車)
ATF WS (トヨタ上位車種)
マチックフルードD (日産車)
マチックフルードJ (日産上位車種)
ATF M-V (マツダ車)
ATF FZ (マツダ車)
* ECVTフルード (スバル車)

これらの規格は、同一メーカーの多くの車種で共用可能な汎用性の高いものですが、車種や年式によっては特殊な規格が使用される場合もあります。

ATFの状態判断と交換

ATFの状態は、オイルレベルゲージを引き抜き、ATFの色調を確認することで大まかに判断できます。暗い茶色や黒色に変色している場合は、ATFの劣化やトランスミッションへの異常を示唆している可能性があります。しかし、色の判定だけでは完全な判断はできず、メーカー推奨の交換間隔を目安にすることが重要です。

ATFの交換は、ATFチェンジャーを使用する方法と、オイルパンから排出する方法があります。ATFチェンジャーは、配管に接続して直接ATFを入れ替えるため、より多くのATFを交換できますが、スラッジが浮遊してATに不具合を起こす可能性が指摘されています。一方、オイルパンからの排出方法は、スラッジが浮きにくいものの、交換に複数回を要します。いずれの方法でも、フィルター交換やオイルパン清掃を同時に行うことが望ましいです。

ATFの交換時期は、走行距離や状態によって異なりますが、数万キロ毎に交換することが推奨されます。メーカーによっては、車両寿命まで無交換でも良いとしている場合もありますが、これはスラッジの遊離によるトラブルを避けるための措置です。

ATFの冷却

ATFは、熱負荷が大きいため、オイルクーラーが装着されるのが一般的です。空冷式と水冷式があり、空冷式は高性能車、水冷式はファミリーカーで多く用いられています。

ATFの歴史

かつてATFには鯨油が使用されていましたが、高温での失活や入手困難になったため、現在は化学合成油が主流となっています。日本のATF市場では、トヨタ・アイシン、ジヤトコ、ホンダの3つのグループが独自にATFを開発・供給してきました。2000年代半ばには、JASO規格が策定され、汎用性の高いATFが普及しました。

まとめ

ATFは、自動変速機の正常な作動に不可欠な要素であり、その適切な管理は車の寿命を左右する重要なファクターです。本記事で紹介した情報を参考に、ATFの適切な管理を行い、安全で快適なカーライフを送ってください。

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