カップライス

カップライス：日清食品の挑戦と挫折、そして未来への布石

1975年、日清食品から画期的な商品「カップライス」が登場しました。カップヌードルの成功に続き、手軽に食べられる加工米飯として注目を集めました。しかし、その販売は長くは続きませんでした。この記事では、カップライスの開発から販売終了までの経緯、そしてその後の日清食品の歩みについて、詳細に解説します。

開発の背景：余剰米問題と安藤百福の挑戦

カップライスの開発は、当時の食糧問題を背景としていました。余剰米の処理に頭を悩ませていた食糧庁長官から、安藤百福社長への相談がきっかけでした。「カップヌードルのような手軽さで食べられる米飯はできないか」という要望は、新たな食品開発への挑戦を促すことになります。

1967年に発売された「日清ランチ」は、カップライスの前身と言える商品でした。しかし、市場の反応は芳しくなく、その反省を活かすべく、日清ランチの欠点を徹底的に克服することに重点が置かれました。油熱処理に熱風処理を加えることで脱脂を行うなど、技術的な改良が重ねられました。

発売前の試食会では、政府関係者から高い評価を得ました。参加者からは「戦場でこんなものが食卓にあれば…」といった声も聞かれ、期待の高さが伺えます。米食文化の復興を目指す経済界からも大きな期待が寄せられました。銀座での試食会でも好評で、「奇跡の食品」「米作農業の救世主」といった報道がなされるなど、マスコミからも大きな注目を集めました。

発売と販売戦略：期待と挫折

発売当初は、エビピラフ、ドライカレーなど7種類のラインナップで展開されました。価格は160円～200円と、当時の物価を考えると高価な部類に入りました。しかし、商品の珍しさや、当時まだ一般的ではなかったピラフなどの存在から、発売当初は好調な売れ行きを記録しました。日清食品は、カップライスの製造に年間利益に匹敵する巨額の資金を投じていました。自動販売機での販売も実施するなど、積極的な販売戦略を展開しました。

しかし、発売から1ヶ月後には売れ行きは急激に減少しました。安藤百福社長自らスーパーマーケットで顧客調査を実施した結果、「高すぎる」「自宅で炊ける」といった声が多数寄せられました。米の値段が小麦粉の5倍も高かったこと、カップライスの値段でインスタント[[ラーメン]]を数個購入できることも、消費者がカップライスを敬遠した要因の一つです。前身の日清ランチですでに問題となっていた価格面での不利が、再び大きな壁として立ちはだかったのです。

さらに、自宅で炊いたご飯に比べると食感が劣るとの意見や、カップ麺と違って湯切りが必要な点も、消費者に敬遠された理由でした。アウトドアや非常食として有用なカップライスでしたが、日清食品は日常食としての簡便さを目指しており、その戦略が市場のニーズと合致していなかったと言えるでしょう。

社内では消費者のニーズを掘り起こそうとする意見もありましたが、安藤社長は、カップライスの需要が低いこと、そしてこの状況がインスタント[[ラーメン]]事業に悪影響を及ぼす可能性を危惧し、製造中止の決断を下しました。製造中止は1990年頃のことでした。カップライスの製造ラインは日清ラ王の製造に転換され、日清ラ王はその後大ヒット商品となりました。

失敗から学ぶ：カップヌードルごはんへの道

カップライスの失敗は、食品業界に衝撃を与えました。日清食品の失敗は、「即席米飯は成功しない」という業界の常識を生み出すことになりました。この風潮は、サトウ食品の「サトウのごはん」が成功するまで続きました。

日清食品はカップライスの失敗から多くのことを学びました。その経験は、後の「日清GoFan」や「カップヌードルごはん」、「カレーメシ」といったヒット商品につながっています。「カップヌードルごはん」は、カップ入りの即席米飯であり、安藤百福社長の先見の明を改めて証明する商品と言えるでしょう。カップライスの失敗は、日清食品の更なる発展のための重要な経験となりました。

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