クロノス・クァルテット

クロノス・クァルテット：革新と多様性を体現する弦楽四重奏団

クロノス・クァルテットは、1973年、ヴァイオリニストのデイヴィッド・ハリントンによってアメリカで結成された弦楽四重奏団です。サンフランシスコを拠点に、現代音楽を中心とした幅広い活動を展開し、世界的な名声を得ています。

当初は男女混合の編成でしたが、メンバーの変遷を経て、現在は再び男女混合の4名体制で活動しています。長年にわたり、様々な音楽ジャンルに挑戦し、現代音楽の枠を超えたレパートリーで聴衆を魅了しています。

現代音楽への貢献と作曲家とのコラボレーション

クロノス・クァルテットは、現代音楽の演奏に特化したアンサンブルとして知られています。600曲以上にのぼる委嘱作品は、その活動の活発さを示すものであり、アルヴォ・ペルト、スティーヴ・ライヒ、フィリップ・グラスといったミニマリズムを代表する作曲家たちの作品も数多く演奏しています。

彼らは、ミニマリズムにとどまらず、アゼルバイジャン出身のフランギス・アリ＝ザデーやアルゼンチン出身のオスバルド・ゴリホフなど、世界中の作曲家の作品を積極的に取り上げてきました。ゴリホフは、クロノス・クァルテットのアルバム『キャラバン』などで編曲も担当しています。近年は、30歳未満の若手作曲家への委嘱にも力を入れており、現代音楽の発展に大きく貢献しています。

ジャンルを超えた音楽性と数々の共演

クロノス・クァルテットの音楽性は、現代音楽にとどまりません。バロック以前の古典音楽から、ラテンアメリカやアフリカの民族音楽、ジャズ、タンゴまで、幅広いジャンルの音楽を演奏しています。映画音楽の制作にも関わっており、その活動は多岐に渡ります。

彼らの名声を高めたきっかけの一つは、ジミ・ヘンドリックスの「紫のけむり」の編曲版の演奏・録音でした。その後もビル・エヴァンスやセロニアス・モンクといったジャズ・ミュージシャンの作品にも取り組み、ポピュラー音楽とのクロスオーバーにも積極的に挑戦し続けています。

作曲家との緊密な協力関係に加え、様々なアーティストとの共演も盛んに行ってきました。インドの歌手アシャ・ボースレ、メキシコのロックバンド「カフェ・タクバ」、ルーマニアのジプシー楽団「タラフ・ドゥ・ハイドゥークス」、詩人アレン・ギンズバーグ、デヴィッド・ボウイ、ビョークなど、その共演者は多様性に富んでいます。さらに、チャールズ・アイヴズの生前のテープ録音を利用した「共演」も実現しています。

アメリカ人ソプラノ歌手ドーン・アップショーとの共演によるアルバン・ベルクの《抒情組曲》初稿の全曲録音は、2004年度グラミー賞室内楽部門最優秀賞を受賞するなど、高い評価を受けています。

メンバー

現在のメンバーは、デイヴィッド・ハリントン（ヴァイオリン）、ジョン・シャーバ（ヴァイオリン）、ハンク・ダット（ヴィオラ）、サニー・ヤン（チェロ）です。長きにわたる活動の中で、多くのメンバーが入れ替わってきましたが、それぞれの個性と技術が融合することで、クロノス・クァルテット独自の音楽性が生み出されています。

クロノス・クァルテットは、現代音楽の枠を超えた幅広いレパートリー、世界中のアーティストとの共演、そして革新的な音楽性で、現代音楽史に大きな足跡を残すアンサンブルとして、その活動を続けています。

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