グラストンベリー

グラストンベリー

グラストンベリーは、イギリス南西部のサマセット州に位置する、静かなたたずまいを見せる小さな町です。行政上はメンディップの非都市ディストリクトに属しており、イングランド西部の主要都市であるブリストルからは南におよそ37キロメートルの距離にあります。2011年に行われた国勢調査によれば、町の人口は約8,932人でした。

伝説に彩られた町

この町が広く知られる最も大きな理由は、古くから伝わる数々の神秘的な伝説との深い結びつきにあります。特に、聖杯伝説や、聖書に登場するアリマタヤのヨセフ、そしてイギリスの国民的英雄であるアーサー王に関する物語は、グラストンベリーのアイデンティティを形作っています。

聖ヨセフと聖杯伝説

グラストンベリーには、アリマタヤのヨセフが聖杯（イエス・キリストが最後の晩餐で使用したとされる杯、あるいは磔刑の際に流れ出た血を受けた杯）を携えてこの地に渡来し、ブリテン島で初めてのキリスト教会を建立したという伝承があります。この物語の起源は古く、4世紀にまでさかのぼるとも言われますが、特に13世紀にフランスの詩人ロベール・ド・ボロンが自身の作品『アリマタヤのヨセフの聖杯物語』の中で紹介したことで、広く知られるようになりました。伝説によれば、使徒フィリポによって宣教師としてブリテン島に派遣されたヨセフがグラストンベリーに到着したとされています。しかし、この聖ヨセフの伝説は、歴史的な根拠に基づくものではなく、あくまで民間に伝わる「俗説」として位置づけられています。

アーサー王とアヴァロン

グラストンベリーは、アーサー王伝説との関連において特に重要な場所とされています。町の中心にあるグラストンベリー修道院の跡地は、アーサー王の物語と深く結びついてきました。12世紀後半、当時のイングランド王であったヘンリー2世は、自身の王権を強化する目的で、イギリスの英雄であるアーサー王の伝説を利用することを図りました。彼は、アーサー王が最期を迎えたとされる伝説の島、アヴァロンとグラストンベリーを同一視する物語を広めることで、自らをアーサー王の正当な後継者として位置づけ、異なる起源を持つノルマン人とブリトン人の間の融和を進めようとしたのです。

ヘンリー2世に仕えていた年代記作家ウァースは、王の意向を受けて著した『ブリュ物語』の中で、こうした要素を取り入れました。グラストンベリー修道院は、1184年に大火に見舞われましたが、ヘンリー2世は修道院の再建に資金援助を行い、さらに修道院の敷地内にある墓地でアーサー王の墓が見つかるという噂をもとに、発掘を指示しました。王の死後間もない1189年、修道士たちは墓地からアーサー王と王妃グィネヴィアのものとされる遺骨を発見したと発表しました。この発見に加えて、アーサー王の伝説の宝剣エクスカリバーも墓から出たと囁かれ、グラストンベリー修道院はアーサー王ゆかりの地として、多くの巡礼者を引き寄せる中心的な場所となっていきました。

町ゆかりの人物と国際交流

グラストンベリーは、著名な人物を輩出していることでも知られています。18世紀の有名な劇作家であるヘンリー・フィールディングや、ジャーナリストとして活躍したヘンリー・スコット・ストークスなどが、この町を出身地としています。

また、グラストンベリーは国際交流も行っており、フランスのブルトヌーという町と姉妹都市提携を結んでいます。

聖杯やアーサー王といった古からの伝説が息づき、歴史的な修道院跡が存在するグラストンベリーは、今もなお多くの人々がその神秘的な雰囲気やスピリチュアルな側面を求めて訪れる、特別な魅力を放つ町です。

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