ゲシュティンアンナ

ゲシュティアンナ（Geshtinanna）は、シュメール神話に登場する農業と夢解釈を司る女神です。タンムーズの姉であり、エンキとニンフルサグの娘とされています。彼女の名前は「天のブドウの木」を意味します。

崇拝

ゲシュティアンナは、主にニップル、イシン、ウルクといった都市で崇拝されていました。アッカド時代を通じて信仰は続いていましたが、古バビロニア時代になるとその姿を消していきます。しかし、彼女の存在が完全に忘れ去られたわけではなく、セレウコス朝時代に至るまで、様々な作品の中で言及されています。彼女は母なる女神として崇められ、夢解釈と深い関わりを持っていました。兄弟であるタンムーズと同様に、ゲシュティアンナもまた田舎の神であり、田園や野原と結びつけられていました。

神話

タンムーズの夢

シュメールの詩「タンムーズの夢」は、タンムーズがゲシュティアンナに恐ろしい夢の内容を語る場面から始まります。その後、悪魔が現れ、イナンナの代わりにタンムーズを冥界に引きずり込もうとします。イナンナは、かつて水の神エンキによって冥界から救出されました。タンムーズは必死に逃げ隠れますが、悪魔はゲシュティアンナにタンムーズの居場所を教えさせようと残酷な拷問を加えます。しかし、ゲシュティアンナは決して口を割ろうとしません。最終的に、タンムーズはある友人に裏切られ、悪魔に捕らえられてしまいます。イナンナの兄弟である太陽神ウトゥは、タンムーズをガゼルに変身させることで救出しようと試みますが、タンムーズは再び捕らえられ、冥界へと連れ去られてしまうのです。

この物語は、「イナンナの冥界下り」の後半部分とほぼ同じ内容を扱っています。

タンムーズの帰還

「タンムーズの夢」の続編にあたるシュメールの詩「タンムーズの帰還」では、ゲシュティアンナがタンムーズの死を嘆き悲しむ様子が描かれています。心変わりをしたイナンナ、そしてタンムーズの母親であるシルトゥールと共に、何日も昼夜を問わず嘆き続けます。3人の女性が嘆き悲しむ中、ハエがイナンナに夫の居場所を教えます。ゲシュティアンナとイナンナは共に、ハエが告げた場所へと向かいます。タンムーズを発見すると、イナンナは、年の半分をタンムーズと共に天国で過ごし、残りの半分を姉であるエレシュキガルと共に冥界で過ごすことを決意します。この決定によって、タンムーズは一年のうち一定期間、地上に戻ることができるようになったのです。

ゲシュティアンナは、農業と夢解釈の女神として、シュメール神話において重要な役割を果たしました。彼女の神話は、死と再生、そして家族の絆といったテーマを象徴的に表現しています。

もう一度検索