ケーソン

ケーソンについて

ケーソン（caisson）は、主に防波堤や地下構造物の基礎を構築する際に利用される、大型のコンクリートまたは鋼で作られた箱状の構造物です。この構造物は、特に海洋や港湾工事において重要な役割を果たしています。例えば、明石海峡大橋の基礎となる鋼製ケーソンは、65メートルの高さと80メートルの直径を持つ大きなものです。

ケーソンの役割と用途

港湾や海洋工事では、波の影響や潮流によって作業が難しい場合や、海底の支持層が浅いところでケーソンがよく使用されます。具体的には、ケーソンを海底に沈めて固定し、その上に防波堤や橋梁を構築します。また、連続して設置することで海底トンネルを作ることも可能です。海で使われるケーソンは、「設置ケーソン」と呼ばれ、陸上のものと区別されます。

工法の種類

ケーソンを用いた工事には大きく分けて2つの工法があります。まず一つ目は「オープンケーソン工法」です。この方法では、地上でケーソン本体を構築した後、中の空間を掘削し、徐々に沈下させて支持層に達します。

二つ目は「ニューマチックケーソン工法」と呼ばれ、潜函工法とも言われます。この工法では、軟弱な地盤や地下水が多い場所での施工時に、ケーソンの下部に作業室を作り、そこに圧縮空気を送り込むことで、水や泥の侵入を防ぎ、掘削を行います。このため、高圧の下での作業となり、作業員は「ケーソン病」と呼ばれる病気のリスクにさらされることがあります。そのため、適切な労働安全衛生管理が必要です。

ケーソン基礎の特徴

ケーソンを用いた基礎構造物にはいくつかの特長があります。まず、他の基礎に比べて断面が大きいため、剛性が高く、構造物の変位が小さくなります。また、水平抵抗力と鉛直支持力がどちらも期待でき、相対的に安定した基礎を提供します。さらに、完成後のケーソン内部は地下構造物として利用することが可能です。

陸上工事におけるケーソンの利用

ケーソンは、戦後しばらくの間、陸上工事でも多く使われていました。しかし、杭基礎工法の発展に伴い、次第にその使用が減少しました。とはいえ、港湾や海洋工事、沈埋トンネルの構築においては、今なおケーソン工法が重要な手法として利用されています。

過去の事故と安全管理

ケーソン工法には、技術や安全管理が未発達だった過去に多くの事故が発生しました。特に潜函工法では、内部の気圧が急激に低下することで作業員が水死する事故が報告されています。1969年には東京都荒川放水路や大阪府尻無川で、計16人が亡くなる事故が発生しました。このような過去の教訓から、現在の施工では安全管理が一層重要視されています。

まとめ

ケーソンは水中や地下構造物の基礎に不可欠な技術であり、特に海洋工事においてその重要性は変わりません。しかし、作業時の安全管理は人命に直接関わるため、十分な注意が求められます。

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