コパノキッキング

コパノキッキング：奇跡の競走馬物語

2015年3月7日、アメリカで生まれたコパノキッキング。その名は、馬主の冠名に「キックする」という意味が加えられています。日本へ輸入される以前から、UAEダービーやアメリカクラシック三冠競走への予備登録がなされるなど、高い期待がかけられていました。しかし、繊細な気性から日本へ輸入後すぐに去勢手術が行われます。

2018年、3歳となったコパノキッキングは栗東・村山明厩舎に入厩。デビュー戦となる京都ダート1200mの未勝利戦では、16頭中唯一の未出走馬という低評価ながら、圧倒的な強さで8馬身差の圧勝劇を演じました。しかし、その後は距離延長や故障の影響で苦戦を強いられます。

転機が訪れたのは藤森ステークス。スタート直後の不利から、得意の逃げ戦法を取れず、後方からレースを進めることになりました。それでも力強い末脚で勝利を収め、このレースで脚質転換に成功。この経験は、後の活躍の礎となりました。

重賞初挑戦となったカペラステークスでは、スタートで出遅れながらも、直線で外を豪快に伸び、重賞初制覇を飾ります。続く2019年の根岸ステークスでは、短期免許で来日していたオイシン・マーフィー騎手との初コンビで、JRA重賞初制覇を達成しました。マーフィー騎手は、コパノキッキングのベスト距離は1200mだと考え、レースプランを工夫したと語っています。

フェブラリーステークスでは藤田菜七子騎手が騎乗。JRA所属の女性騎手として初のGIレースへの挑戦となりました。5着という結果に終わりましたが、その挑戦は大きな話題を呼びました。その後も、東京スプリントで2着、東京盃で優勝するなど活躍を続けます。

2019年の秋シーズンには海外遠征が計画されましたが、日韓貿易紛争の影響でコリアスプリントへの出走は叶いませんでした。しかし、クラスターカップ3着後に出走した東京盃では、圧倒的な人気に応え、重賞3勝目を挙げます。この勝利は、藤田菜七子騎手にとってもJRA所属の女性騎手として初の交流重賞制覇となりました。

2019年のカペラステークスでは、58kgの斤量を背負いながらも、2度目の優勝を達成。藤田菜七子騎手はJRA所属の女性騎手として史上初のJRA重賞連覇を成し遂げました。

2020年は根岸ステークスで2着、東京スプリントで5着など、前年ほどの活躍はできませんでしたが、持ち前の能力の高さを示すレースもありました。

2021年、6歳になったコパノキッキングは、サウジアラビアのリヤドダートスプリントに挑戦。10番人気という低評価を覆し、海外初挑戦で初優勝を飾ります。続くドバイゴールデンシャヒーンでは5着に終わりますが、その強さを世界に示しました。

2022年、7歳シーズンはリヤドダートスプリントで4着。ドバイゴールデンシャヒーンを目指していましたが、右第1指節種子骨々折を発症し、惜しまれながら引退することとなります。

コパノキッキングは、その類まれな才能と、関係者たちの尽力によって、数々の困難を乗り越え、輝かしい成績を残しました。その物語は、競走馬と人との絆、そしてスポーツのドラマ性を改めて私たちに教えてくれます。父は2008年のドンハンデキャップ勝ち馬スプリングアットラスト、母はCeladonで、母の半兄には函館2歳ステークス勝ち馬モエレジーニアスがいます。血統背景もその活躍を裏付けるものと言えるでしょう。

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