コンパウンドボウ

コンパウンドボウ：力学と技術の結晶

コンパウンドボウは、1966年にアメリカのホレス・ウィルバー・アレンによって発明され、1969年に特許を取得した、滑車とケーブルを用いた近代的な弓です。その複雑な機構は、力学と機械的な要素を組み合わせたもので、従来の弓とは異なる特徴を持っています。

コンパウンドボウの概要

コンパウンドボウの最大の特徴は、滑車と連動したリムの機構です。これにより、通常の弓よりも強い力で引くことができ、効率的な力の伝達を実現しています。さらに、引き切った際には「レットオフ」と呼ばれる機構が働き、保持力がピーク時の約90％まで軽減されます。このため、狙いを定める際の保持が安定し、高い命中精度が期待できます。

現在のオリンピックのアーチェリー競技ではリカーブボウのみが認められていますが、世界アーチェリー連盟ではコンパウンドボウのクラス創設に向けてルールの調整が進められています。パラリンピックでは、リカーブボウとコンパウンドボウの両方が採用されており、W1クラス（四肢の障害、車椅子使用）では選手が自由に選択できます。

コンパウンドボウの構造

コンパウンドボウは、以下の主要な部品で構成されています。

ライザー（ハンドル）

弓の持ち手部分であり、力が集中するため高い剛性が求められます。通常、アルミニウム合金、マグネシウム合金、炭素繊維などが用いられ、航空機グレードの7075アルミニウム合金がよく使用されます。

リム

ライザーと滑車を接続する部分で、高い張力がかかります。そのため、複合材料が用いられます。近年では、上下方向に振動を逃がすパラレルリムが主流になりつつあります。

滑車（カム）

弓の両端に設置された滑車で、その形状やケーブルのかけ方によって、シングルカム、ハイブリッドカム、デュアルカム、バイナリカムなどの種類があります。コンパウンドボウの性能を左右する重要な部分です。

ストリングとケーブル

ストリングには、矢筈を引っ掛けるためのノッキングポイント、リリーサーを引っ掛けるためのDループ、照準器として用いるピープサイトなどが取り付けられます。2本のケーブルは、上下の滑車の動きを連動させる役割を果たします。

その他のオプション

射撃時の安定性を高めるスタビライザー、狙いを定めるためのスコープ、発射タイミングを決めるリリーサーなどがあります。

一般的な弓具とは異なり、ストリングの取り外しや滑車の同期調整にはボウプレスという専用器具が必要です。また、コンパウンドボウは反発力の低下が少ないため、保管時にストリングを取り外す必要はありません。

コンパウンドボウの欠点

コンパウンドボウには、以下のような欠点も存在します。

可動部が多いため、通常の弓に比べて壊れやすい。
矢を装填せずに空撃ちすると、貯められたエネルギーが弓にかかり破損する危険性がある。
木材などの素材を使用していないため、軽量であり、手の震えで狙いがぶれやすい。

コンパウンドボウの記録

成人用の弓のドローウェイトは通常40〜80ポンドで、矢の速度は毎秒250〜370フィートです。

矢速表示

国際ボウハンティング機構（IBO）とアーチェリー・トレード・アソシエーション（ATA）の2種類の測定方法があり、それぞれ異なる条件下での速度が記録されています。

最大射程

35ポンド未満の上級クラスで約500m
72.8ポンド：1103.03m（射手：Buddy DeConnick、1992年1月8日）
無制限：1207.39m（射手：Kevin Strother、1992年7月31日）

最も遠くの目標に当てた記録

世界アーチェリー連盟の条件下：283.47m（射手：マット・スタッツマン、2015年12月）

コンパウンドボウが登場する作品

コンパウンドボウが主要な役割を果たす作品や特筆すべき作品を以下に示します。

How to Shoot a Compound Bow ( コンパウンドボウの撃ち方について )

関連項目

アーチェリー
アーチャーのパラドックス
複合弓、リカーブボウ
クロスボウ（コンパウンドクロスボウなど）

コンパウンドボウは、その複雑な機構と高い性能から、競技用だけでなく、狩猟やレクリエーションとしても広く用いられています。その進化は現在も続いており、今後も新たな技術が導入されることが期待されています。

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