ザモリン

ザモリン（Zamorin）とは

ザモリンは、南インドのケララ地方に位置するカリカット（コーリコード）を拠点としたヒンドゥーの領主を指します。この称号は現地では「サームーティリ」と呼ばれ、その名は「海の王」という意味を持っています。

歴史的背景

カリカットは、古くからアラブ商人との盛んな交易の場として知られています。7世紀には北インドでのウマイヤ朝などのムスリム勢力の南下が見られましたが、南インドにはムスリム商人が貿易目的で訪れるようになりました。これにより、アラブ人とインド人が交わる集落が形成され、「マーピラ」と呼ばれるムスリムカーストが興り、マラバール地方の人口の約20%を占めるに至りました。

また、北インド王朝が騎馬戦術に依存する中、南インドも馬の輸入を行い、マーピラがアラビア海での馬貿易で重要な役割を果たし、カリカットは経済的に発展しました。15世紀にはアラブとペルシアの商人に支えられ、カリカットはインド洋交易の重要な拠点となりました。

ザモリンの統治

この地域は、ザモリンの権力下に置かれ、彼はコーチン王国やヴェーナードとともにマラバール地方を統治しました。ザモリンは交易を推進し、アラブ商人、グジャラート商人、マーピラ及びキリスト教徒、ユダヤ教徒が活動し、カリカットは交易のハブとして繁栄しました。ここから出荷された胡椒や他の特産品は、インド洋だけでなく地中海にまで流通しました。

1498年にはポルトガルの探検家ヴァスコ・ダ・ガマがカリカットに到着し、ザモリンと面会しましたが、儀礼的な贈り物が少なかったために冷遇されました。その後、ポルトガルはカリカットを貿易の中心地として重視し、ザモリンとは敵対関係に入ります。ポルトガルの進出によって、現地の勢力との対立が生じ、1500年には両者の間で衝突が発生しました。

戦いとその後

1502年、ヴァスコ・ダ・ガマが再度派遣され、カリカットとコーチンに報復する攻撃を行いました。ザモリンはコーチンに近づくも、強大な軍を持ちながらも攻落に失敗し、多大な損失を被りました。以降、ザモリンは自らの軍事力の限界を意識し、ポルトガルと対抗する連合軍の結成を試みます。

1509年には、ザモリンとグジャラート・スルターン朝、エジプトの連合艦隊とポルトガルとの間にディーウ沖の海戦が繰り広げられました。圧倒的な艦隊を持つ連合軍でしたが、ポルトガルの巧妙な戦略に敗退し、ポルトガルはインド洋の支配権を獲得します。

1511年から1513年までには、ポルトガルがカリカットに新しい港や要塞を築くに至ります。しかし、1526年にはザモリンが要塞を奪還し、再び権力を取り戻しました。その後、ザモリンはオランダと同盟し、コーチン王国に対抗する戦いを続けました。

ザモリンの滅亡

1766年には、マイソールの支配者ハイダル・アリーによる侵攻を受け、カリカットが陥落し、ザモリンは事実上その勢力を失います。最終的に1792年、ティプー・スルターンが敗北した際、カリカットはイギリスの植民地となり、ザモリンは政治的権力を喪失しますが、マラバール地方の最大地主として残りました。

1931年には、ザモリンが拒否したグルヴァユール寺院の開放を求める非暴力運動が圧倒的な支持を集めましたが、ザモリンの拒絶により運動は失敗に終わります。現在、カリカットにはザモリンの栄光を示す建造物はほとんど残っておらず、その歴史に思いを馳せることが求められています。

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