グジャラート・スルターン朝

グジャラート・スルターン朝の興亡

グジャラート・スルターン朝（1407年 - 1573年）は、現在のインド、グジャラート地方に存在したイスラム王朝です。この王朝は、デリー・スルターン朝の衰退期に独立を果たし、独自の繁栄を築きました。アフマド・シャーヒー朝、ムザッファル・シャーヒー朝とも呼ばれることがあります。

成立と初期の拡大

1398年、ティムールによるデリー侵攻によりデリー・スルタン朝の権威が失墜しました。この混乱に乗じて、グジャラート総督のムザッファル・ハーンは独立の動きを強め、1407年にグジャラート・スルターン朝を創始しました。初代スルタン、ムザッファル・シャー1世の死後、2代目のアフマド・シャー1世が即位しました。

アフマド・シャー1世は、1413年に新都アフマダーバードを建設し、遷都を断行しました。この都市は急速に発展し、王国の繁栄を象徴する存在となりました。また、彼は行政改革を進め、周辺のマールワー・スルターン朝やバフマニー朝との戦いを繰り広げながら、領土を拡大しました。この時代に、グジャラート王国の基礎が確立し、アフマド・シャーヒー朝と呼ばれることもあります。

海上交易の繁栄

6代目のマフムード・ベガルハは、「二つの都市」を意味する別名を持つ有能な君主でした。彼は新たにチャーンパーネールとジュナーガドを征服し、王国の勢力を拡大しました。グジャラート・スルターン朝は、アフマド・シャー以来の繁栄を享受し、特にキャンベイ湾を中心とした交易で大きく発展しました。カンベイは、マラバール地方のカリカットと並び、インド西海岸における重要な貿易拠点として栄えました。

この王朝は、インド洋交易に従事する商人たちの活動を規制せず、ムスリム商人（ボーラ）やヒンドゥー教徒、ジャイナ教徒の商人（バニヤー）が活発に交易を行いました。グジャラート地方で生産された綿布は、アラビア海岸の都市や東南アジアに大量に輸出されました。

ポルトガル勢力の進出と衰退

1498年、ポルトガルのヴァスコ・ダ・ガマがカリカットに到達すると、16世紀初頭からポルトガル勢力がインド洋に進出し、交易の支配権を巡って地方勢力との間で衝突が頻発しました。1509年には、グジャラート王国、カリカット、エジプトのマムルーク朝の連合艦隊が、ポルトガル艦隊とディーウ沖で激戦を繰り広げました（ディーウの戦い）。

連合軍は数で優位に立っていましたが、ポルトガルの巧みな戦術に敗北し、ポルトガルがインド洋の制海権を握るきっかけとなりました。その後、マフムード・ベガルハはポルトガルとの和解を模索し、ポルトガルにディーウ島での商館設置を許可しました。

10代目のバハードゥル・シャーは、1531年にマールワー・スルターン朝を滅ぼすなど、有能な君主として知られていましたが、ムガル帝国やアフガン系スール族との戦いが絶えませんでした。1535年には、ムガル帝国の皇帝フマーユーンに敗北しましたが、フマーユーンがスール族との戦いのために撤退したため、一命をとりとめました。

1537年、バハードゥル・シャーはムガル帝国に対抗するためポルトガルと交渉中に海で溺死しました。この出来事は、アクバルの伝記「アクバル・ナーマ」にも挿絵として描かれています。バハードゥル・シャーの死後、王国の王統は維持されたものの、地方の有力者が台頭し、王権は衰退しました。

ムガル帝国による滅亡

16世紀後半、混乱が続く中、1573年にムガル帝国によって首都アフマダーバードが陥落し、グジャラート・スルターン朝は滅亡しました。この王朝の崩壊は、ムガル帝国のインド支配を決定づける出来事の一つとなりました。

グジャラート・スルターン朝は、その繁栄と衰退の歴史を通じて、中世インドにおける重要な一勢力であり、その遺産は今日にも影響を与えています。

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