サヨリ

サヨリ（鱵、細魚、針魚）

サヨリは、ダツ目サヨリ科に属する海産魚で、学名は Hyporhamphus sajori といいます。日本では、春の訪れを告げる魚として親しまれ、その繊細な味わいから高級魚としても扱われています。

特徴

サヨリは、最大で全長40cmほどに成長する細長い体型をしています。同じダツ目のサンマに似ていますが、サヨリ科の特徴として下顎が長く突き出ている点が大きく異なります。この下顎は、生きている時には先端が赤く色づいています。

体の色は、背側が青緑色、腹側が銀色に輝き、筋肉は半透明です。また、視力が優れていることでも知られています。

サヨリの腹膜は真っ黒であるため、「見かけによらず腹黒い人」の代名詞として使われることもあります。しかし、これは筋肉が半透明で光を透過しやすい魚に共通して見られる現象であり、腹腔内への光の侵入を防ぐための適応と考えられています。

分布と生態

サヨリは、樺太西側から台湾にかけての北西太平洋、日本海、黄海、渤海湾などの沿岸域に生息しています。群れをなして海面すれすれを泳ぎ、動物プランクトンや海藻の断片などを捕食します。危険を感じると、水面から飛び跳ねることがあります。

産卵期は4月中旬から8月中旬で、藻場に群れで入り込み、海藻や海草に卵を産み付けます。孵化した稚魚は、下顎が伸張しながら成長し、27cm程度になると成魚とほぼ同じ体型になります。寿命は2年ほどと考えられています。

漁獲と利用

サヨリは春から秋にかけて漁獲されますが、特に3月から5月が旬とされています。刺身や寿司だね、天ぷら、塩焼き、干物など、様々な料理で賞味され、その上品な白身は多くの人々を魅了します。

釣りの対象魚としても人気があり、地域によって様々な釣り方が工夫されています。関東ではウキ釣りやフカセ釣り、関西ではシモリを使った釣りが一般的です。また、川へ遡上するサヨリを、竹竿と糸を使って引っ掛ける独特な漁法も存在します。

中国でもサヨリは食用とされており、山東省では「針涼魚」や「馬歩魚」と呼ばれ、渤海湾や黄海で漁獲されています。

近縁種

サヨリ科の魚は世界中に80種以上が生息しており、日本にも13種が分布しています。

センニンサヨリ: サヨリに似ていますが、下顎がやや短く、尾びれの切れ込みが深い点が特徴です。沖縄ではミズバユーと呼ばれています。
クルメサヨリ: 小型で、下顎の先端が黒いのが特徴です。汽水域に生息し、絶滅危惧種に指定されています。
ナンヨウサヨリ: サヨリよりも下顎が長く、西日本の太平洋側に分布しています。
ホシザヨリ: 体側に黒い斑点が点在し、大型になる種類です。西日本の太平洋側に分布しています。
コモチサヨリ: 卵胎生で稚魚を産む小型のサヨリで、先島諸島に分布しています。
デルモゲニー: 観賞魚としても人気のある小型の卵胎生魚で、東南アジアの淡水域に生息しています。

サヨリは、その美しい姿と繊細な味わいで、多くの人々に愛される魚です。春の食卓を彩る一品として、ぜひ味わってみてください。

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