シャトル輸送機

シャトル輸送機 (Shuttle Carrier Aircraft: SCA)

スペースシャトル（オービタ）を輸送するためにNASAが改造したボーイング747航空機です。2機が製造されました。

概要

SCAは、[ボーイング]]747-100と747-100SRをそれぞれ原型として改造された2機が存在します。主な任務は、スペースシャトルの着陸地点から、打ち上げ前の整備施設があるケネディ宇宙センター]への[[輸送です。また、シャトルの整備工場とKSC間の輸送にも使用されました。

オービタを輸送する際には、SCAの機体上部に外部燃料タンク(ET)の取り付け部と同様の支柱が設けられ、この3箇所でオービタが固定されます。オービタの固定には、Mate-Demate Devicesと呼ばれる大型のガントリー状の機械が使用されます。

N905NA

最初に運用を開始したN905NAは、元々アメリカン航空向けのボーイング747-123型機(N9668)でした。1970年代のスペースシャトル実験機エンタープライズの滑空実験では、アメリカン航空のマークと社名が消されたものの、機体はアメリカン航空の塗装「ポリッシュド・スキン」のままでした。

1976年には大規模な改造を受け、軽量化のために内装や座席が取り除かれ、オービタを載せるための支柱が取り付けられました。機体の補強も行われ、水平尾翼端には安定性向上のための追加垂直安定板が装着されました。エンジンも換装され、ボーイング747の試験飛行時と同様の脱出システムも装備されました。

オービタ輸送時には、機体の燃費が著しく悪化します。これは、オービタ自体の重量と空気抵抗が大きいためです。シャトル非搭載時の飛行距離が5,500海里（10,000km）であるのに対し、オービタ輸送時の飛行距離は1,000海里（1,900km）程度にまで減少します。そのため、大陸横断時には複数回の給油が必要となりました。シャトル搭載時の燃費は0.23マイル/ガロン（0.1km/L）で、通常時の約2/3です。また、飛行準備には1週間あたり約170人の作業員が必要で、大陸横断時には1回あたり約23万ドルの費用がかかりました。

かつて空中給油機構を取り付ける実験も行われましたが、垂直尾翼に亀裂が見つかったため、実験は中止されました。

N905NAは退役後、シャトルの展示先への輸送任務を終え、2014年4月30日までエリントン空軍基地に保管されていました。その後、NASAジョンソン宇宙センターに隣接するスペースセンターヒューストンに移設され、スペースシャトルの実物大模型インディペンデンス号を上に載せた状態で2015年2月から展示公開されています。

N911NA

[1986年]]のチャレンジャー号事故後、NASAは[[日本航空]から中古の747-SR46を調達しました。この機体は元JA8117号機で、日本国内線用747SRの1号機でしたが、JAL123便事故の影響で退役していました。

N911NAとして登録後、N905NAと同様の改造が施され、1990年にNASAで運用を開始しました。JALの整備の素晴らしさに感銘を受けたNASAから、JALの整備部に表彰状が贈られています。N911NAの最初の任務は、1991年に新造されたエンデバーをカリフォルニア州のパームデールにある工場からケネディ宇宙センターへ輸送することでした。

2機のSCAは機能面ではほぼ同じですが、N911NAのアッパーデッキの窓が5つであるのに対し、N905NAは2つしかないといった外観上の違いがあります。

N911NAは[2012年]]2月8日に退役し、NASAの成層圏赤外線天文台]への[[部品取り用機体となりました。その後、2014年9月にカリフォルニア州のJoe Davies Heritage Airparkに運ばれ、屋外展示されています。機体の所有権はNASAが保持しています。

類似の機材

ソ連版シャトル「ブラン」の輸送には、VM-T（Атлант、アトラーント）とAn-225（Мрія、ムリーヤ）という大型輸送機が使用されました。

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