ショウロ

ショウロ：マツ林の砂地に潜む珍味

ショウロ（松露、学名: Rhizopogon roseolus）は、イグチ目に属するキノコの一種です。海外の研究では学名が見直される可能性があり、今後の研究に注目が必要です。北半球、特にユーラシア、北アメリカ、アジア東北部に分布し、日本ではアカマツやクロマツなどの二針葉樹林の砂地で発見されます。本州、四国、九州に分布が確認されています。ニュージーランドでは、食用目的で導入されています。

生態：マツと共生する先駆きのこ

ショウロは、春と秋に、海岸近くのクロマツ林や山地のアカマツ林の砂地で発生します。地中に浅く埋もれて生長し、地上に現れるのは成熟した時です。小さなジャガイモが転がっているように見えることから、見つけるのは容易ではありません。

ショウロは外生菌根菌であり、マツの根と共生関係にあります。マツの生育を助け、自身も養分を得て生活しています。特に、攪乱を受けた場所に多く見られ、先駆植物であるマツが定着した場所に発生することが多いです。林道開設などによる環境変化にも反応します。逆に、林床が藪に覆われると発生しなくなります。

胞子の散布は、成熟した子実体が雨水で運ばれたり、昆虫などに食べられたりする際に起こります。担子器は胞子を能動的に放出する機能を失っていることが分かっています。また、ショウロは二極性の交配様式を持つことも明らかになっています。

形態：独特の塊状子実体

子実体は1～4cmほどの歪んだ塊状で、卵形や球形をしています。表面には根状菌糸束が絡みついています。最初は白色から淡紫褐色ですが、成熟すると黄褐色になり、傷つけると淡紅色に変化します。地表に出た部分は黄褐色から赤色を帯び、虫に食害されると内部の基本体が現れます。基本体は最初は白色ですが、後に黄褐色になり、悪臭を放ちます。外皮は剥げにくく、内部はスポンジ状です。幼菌は純白で弾力がありますが、成熟すると黄褐色～黒褐色に変色し、粘液状に液化します。

胞子は楕円形で、暗褐色を帯び、油滴を含むことがしばしばあります。担子器は棍棒状で無色、薄壁です。シスチジアはなく、かすがい連結は通常欠如しています。

分類：イグチ目に属するきのこ

ショウロは、かつては腹菌類に分類されていましたが、マツとの外生菌根形成、胞子の特徴、色素成分、分子系統解析の結果から、現在はイグチ目に分類されています。特にヌメリイグチ属と類縁関係が近いとされています。

セイヨウショウロ（トリュフ）と名前が似ていますが、セイヨウショウロは子嚢菌類に属し、ショウロとは類縁関係が非常に遠いものです。

分子系統解析：新たな発見

近年の分子系統解析では、日本産のショウロ属は少なくとも15の系統に分類されることが示唆されました。多くの種が既知種とは異なる可能性が高いとされ、ショウロやアカショウロは未記載種である可能性も指摘されています。

食・毒性：安全な高級食材

ショウロは安全で美味しい食用キノコです。古くから珍重されてきましたが、発見が難しいため、希少価値が高く、高級食材となっています。近年は環境悪化により産出量が激減し、市場に出回ることは少なくなっています。栽培の試みはありますが、商業的な成功には至っていません。

調理法：様々な料理に活用

内部が純白色の未熟なものを「コメショウロ」と呼び、最も美味とされています。塩水で洗い、佃煮、吸い物、塩焼き、茶碗蒸し、炊き込みご飯など、様々な料理に使われます。若いうちはさわやかな風味とサクサクとした歯触りが楽しめます。成熟したものは「ムギショウロ」と呼ばれ、評価はやや低くなります。さらに成熟したものは悪臭を放つため、食用には適しません。

栽培の試み：マツ林環境の改善

ショウロの栽培は、マツ林の環境改善が重要です。林床の有機物層を除去し、木炭や黒土を加えることで、発生を促す試みがなされています。鳥取県では、鳥取砂丘と北条砂丘で、ショウロ栽培プロジェクトが進められています。

類似種：識別ポイント

ショウロには、オオショウロ、アカショウロ、ホンショウロなどの類似種があり、それぞれ特徴が異なります。また、有毒のニセショウロ類との識別には注意が必要です。ニセショウロ類は断面が黒紫色で無臭、成熟すると粉状または綿クズ状になります。ショウロは断面が白～淡黄色で、刺激臭があります。ウスキニセショウロも幼菌時はショウロと間違われやすいですが、殻皮の表面に特徴的なひび割れがあり、成熟すると黒くなり、胞子を吹き出します。

もう一度検索