シロナガスクジラ

シロナガスクジラ（Blue Whale）

シロナガスクジラ（Balaenoptera musculus）は、哺乳綱偶蹄目ナガスクジラ科に属する海洋哺乳類であり、英語ではBlue whaleと呼ばれます。現存する最大の動物種として知られ、過去に存在したあらゆる動物の中でも最大級の大きさを誇ります。体長は最大で34メートルにも達することが記録されています。

名称の由来

江戸時代には、その長身からナガスクジラと共に「長須鯨」と呼ばれていました。現在の和名である「シロナガスクジラ」は、水面に浮かび上がる際に白く見えることに由来します。標準和名が定められる以前は、「ナガスクジラ」「ナガス」「ナガソ」など、様々な呼称が存在していました。

英語名の「Blue Whale」の他に、「Sibbald's rorqual」や、腹部に付着した珪藻によって黄色味を帯びて見えることから「Sulphur bottom（硫黄色の腹）」などの異名も存在します。

分布

シロナガスクジラの模式標本の産地はフォース湾です。熱帯から寒帯にかけての沿岸や外洋に広く分布し、季節的な回遊を行います。夏にはオキアミが豊富な寒帯や極海の氷の近くまで移動し、冬には温帯から熱帯にかけての海域で繁殖を行います。外洋に生息することが多いですが、カリフォルニア湾やチリ沿岸など、沿岸部に生息する個体群も存在します。過去には日本列島の沿岸にも多く生息していましたが、商業捕鯨によって激減しました。

近年では、シロナガスクジラやピグミーシロナガスクジラの重要な生息域が、これまで注目されてこなかった中東、アフリカ、チャゴス諸島、南タラナキ湾などにも点在することが判明しています。

分類

海洋哺乳類学会（SMM）は、現在4つの亜種を認めています。

Balaenoptera musculus musculus (Linnaeus, 1758) キタシロナガス：北大西洋と北太平洋に分布。
Balaenoptera musculus intermedia Burmeister, 1871 ミナミシロナガス：南氷洋に分布し、最大亜種。
Balaenoptera musculus brevicauda Ichihara, 1966 ピグミーシロナガス：インド洋と南太平洋に分布。
Balaenoptera musculus indica Blyth, 1859 Northern Indian Ocean blue whale：北インド洋に分布。

チリ沖には5番目の亜種と思われる個体群も生息しています。

形態

体長は20〜26メートルに達し、最大では33.6メートル、体重は80〜199トンにもなります。体型は細長く、紡錘形をしています。体色は青灰色で、淡い色の斑点があります。腹側はやや明るい色をしています。下顎から臍にかけて55〜88本の溝（畝）があります。上顎は平らでU字型をしており、髭板と剛毛は黒色です。背びれは小型で三角形をしています。頭頂部には2つの噴気孔があります。

捕鯨の影響により、平均体長が4〜7メートル減少した可能性が指摘されています。

生態

最長寿命は118年と推定されています。繁殖期と子育て期間を除き、単独または小規模なグループで行動し、明確な社会構造はありません。主にオキアミを濾過摂食し、一日に平均16トンものオキアミを捕食することが判明しています。繁殖は胎生で、冬季に低緯度地域で出産し、通常1頭の幼獣を産みます。

シロナガスクジラは、非常に大きな鳴き声を出すことでも知られています。その鳴き声は低周波で、160キロ[[メートル]]以上離れた場所にも届きます。

天敵は主にヒトとシャチです。シャチによる襲撃は稀ですが、子供や未成熟な個体が標的になることがあります。

人間との関係

シロナガスクジラは、かつて捕鯨の対象とされ、個体数が激減しました。1966年に国際[[捕鯨委員会]]（IWC）によって捕獲が全面的に禁止されましたが、日本やソ連による乱獲や密猟が横行しました。

現在、国際自然保護連合（IUCN）はシロナガスクジラを絶滅危惧種に指定しています。船舶との衝突、海洋汚染、騒音、地球温暖化などが脅威となっています。

一部の地域では、ホエールウォッチングの対象となっています。

保全状況

シロナガスクジラの個体数は、2018年時点で5,000〜15,000頭と推定されています。保護活動の結果、徐々に回復傾向にありますが、依然として多くの課題が残されています。

南大西洋の鯨類保護区の設立も提案されていますが、捕鯨国を中心とした反対により、実現には至っていません。

日本との関わり

日本では、古くは「長須鯨」と呼ばれていました。1966年に商業捕鯨が禁止されましたが、過去には多くの個体が捕獲されました。近年では、神奈川県の由比ヶ浜に漂着した事例があります。

今後の課題

シロナガスクジラの保全のためには、地球温暖化対策、海洋汚染防止、船舶との衝突防止など、多岐にわたる取り組みが必要です。国際的な協力体制を強化し、持続可能な共存を目指していく必要があります。

また、異種間交配が進んでおり、種としての将来が懸念されています。

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