ジャヒー

ジャヒーは、ゾロアスター教の神話に登場する、アンラ・マンユ（悪神）の愛人であり、同時に母親ともされる女悪魔です。彼女は「ジェー」とも呼ばれ、その名前は「性悪女」を意味すると解釈されることが多いですが、この解釈は後世に生まれたもので、本来は単なる蔑称ではなかったという説も存在します。

ジャヒーは、アンラ・マンユを産んだ際に初めて月経を経験し、この現象を世界にもたらしたとされています。この神話的な起源から、彼女は月と深い関わりを持つとされ、月の満ち欠けや月経周期など、女性特有の現象と結び付けて考えられてきました。

神話によれば、アンラ・マンユが最高神アフラ・マズダーの呪縛から解き放たれた際、怒りに燃え、アフラ・マズダーの楽園を破壊しようとしました。しかし、その楽園のあまりの素晴らしさ、特にそこに住む人間たちの優れた存在に圧倒され、破壊を諦めてしまいます。失意のアンラ・マンユを慰めるために、彼の部下たちが次々と入れ替わって彼を励ましますが、なかなか元気を出すことができませんでした。しかし、ジャヒーが言葉をかけると、アンラ・マンユはたちまち立ち直り、再び闘志を取り戻しました。この出来事をきっかけに、ジャヒーはアンラ・マンユの陣営で重要な地位を確立したとされています。

古代社会では、月経は神秘的な力や魔術の源泉とみなされていましたが、後代の父権的な社会構造においては、月経は「穢れ」として忌み嫌われるようになりました。ジャヒーに関しても、このような社会の変化の影響を受け、本来は太母的な存在だったにもかかわらず、悪魔として扱われるようになったと考えられます。また、ユダヤ教の神の名前のいくつかが、ジャヒーの男性形ではないかという説もあり、彼女がもともと持つ力の大きさを暗示しているとも言えるでしょう。このように、ジャヒーの神話的なイメージは、時代とともに変化してきた背景があります。彼女は、ゾロアスター教における悪の象徴でありながら、古代における女性の力を象徴する存在でもあると言えるでしょう。

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