シャン語

シャン語（Shan language）

シャン語は、ミャンマー北東部のシャン州を中心に、タイ北部や中華人民共和国雲南省シーサンパンナ・タイ族自治州に話者が分布する、タイ諸語に属する言語です。言語分類的にはタイ語と近縁の関係にあります。話者自身やタイ語では「タイ・ヤイ（Tai-Yai）」または「タイ・ロン（Tai Long）」とも呼ばれています。書き言葉には、ビルマ文字と一部共通する独特のシャン文字が用いられています。

社会言語学的状況

シャン語が話される地域は、それぞれの国の政策や社会状況の影響を受けています。

ミャンマーでは、かつての軍政下で学校教育における少数民族言語での授業が廃止されました。しかし、現在でも古い教科書を利用した私塾などで、シャン語の教育が続けられています。

タイでは、シャン人のディアスポラ社会において、民族的アイデンティティを維持する上でシャン語教育が非常に重要視されています。特に、タイ語や中国語の文化的影響力が強い国境地帯の村などでは、シャン語の消滅が懸念されています。こうした状況に対抗するため、特定の村では2002年から青年組織による子ども向けのシャン語とシャン文化のサマーキャンプが開催されるなど、言語継承に向けた取り組みが行われています。

音韻論

シャン語の音節は、一般的に「頭子音・介子音・母音・声調」という構造を持ちます。

頭子音: いくつかの音には異音が見られます。例えば、[sʰ], [s], [r]にはそれぞれ[tsʰ], [ts], [r̥]といった異音が存在します。また、一部の話者間では、本来区別されるべき/r/と/l/の音が共に[l]として発音される現象も見られます。
介子音: 頭子音と母音の間に現れる介子音としては、-j-, -w-, -r-の3種類が認められています。
母音: 特定の分析によれば、シャン語には特徴的な母音体系があります。
声調: 意味を区別する要素として、五つの異なる声調があります。具体的には、上昇調（˧˥）、低平調（˩）、中平調（˧）、高平調（˥）、下降調（˥˧）です。これらのうち、第2声、第4声、第5声は、しばしば声門閉鎖音やきしみ声を伴って発音されることがあります。
末子音: 音節の最後に置かれる末子音も特定のリストに限定されます。

音韻史においては、他のタイ諸語に見られる/f/の音が、シャン語では/pʰ/に変化するという特徴的な現象（強化）が見られます。例えば、タイ語の「火」（/faj˧/）は、シャン語では「火」（/pʰáj/）となります。

文法

シャン語は比較的孤立語的な性質を持つ言語です。

名詞句: 名詞を修飾する要素（形容詞、類別詞、指示詞など）は、被修飾名詞の後ろに置かれる語順が一般的です。
* 動詞句: 動詞を連続して用いる「動詞連続構文」が頻繁に利用されます。動詞（または動詞の連なり）には、その前に法の標識、否定を表す語、継続相を示す標識などが付加され、完了相を示す標識は動詞の後に置かれます。

シャン語は、東南アジア言語連合に含まれる言語の一つであり、クラ・ダイ語族の中でもタイ語やチワン語などと共にタイ諸語を構成します。

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