スティーブ・ワン

スティーブ・ワン（王孫杰）は、アメリカ合衆国を拠点に活動する著名なSFXアーティスト、造形作家、そして映画監督です。特殊メイクやクリーチャー造形、そして独自のアクション演出に長け、数多くのSF、ホラー、アクション映画にその才能を発揮しています。

1967年に台湾の台北市で生を受けたワンは、9歳まで故郷で過ごした後、家族と共にアメリカ、カリフォルニア州へ移住しました。子供の頃から造形に深い関心を持ち、市販のものを改造したり、ハロウィンのマスクをゼロから自作するなど、独学で技術を磨いていったといいます。この幼少期の経験が、後にプロの道へ進む礎となりました。

高校卒業後、大学に進学する代わりに映画業界へと飛び込みます。大学の映画学科では、自身が最も学びたいと考えていた特殊メイクやクリーチャー造形の専門的な技術を十分に習得できないと判断したためでした。彼の選択は功を奏し、後に特殊効果界の巨匠として知られるリック・ベイカーやスタン・ウィンストンといった一流のアーティストたちから直接指導を受ける機会を得ます。彼らの下で実践的な技術と知識を吸収し、プロフェッショナルとしてのキャリアをスタートさせました。

1986年、ホラーSF映画『スペースインベーダー』でクリーチャー造形スタッフとしてプロデビューを果たします。以降、SFXアーティストとして『プレデター』（アート・デパートメント・コーディネーター、コンセプトアート）、『死霊のはらわたII』（造形）、『ビートルジュース』（造形）、『メン・イン・ブラック』（クリーチャーデザイン）、『PLANET OF THE APES/猿の惑星|PLANET OF THE APES_猿の惑星』（造形、デザイン）、『ヘルボーイ』（アートスーパーバイザー）、『AVP2 エイリアンズVS.プレデター』（クリーチャー造形）など、名だたる作品の特殊効果や造形に携わっています。彼の生み出す独創的かつ説得力のあるクリーチャーや特殊メイクは、多くの作品世界を彩ってきました。

1990年には、SFアクション映画『GUYVER』で映画監督としても活動を開始します。この作品はスクリーミング・マッド・ジョージとの共同監督でしたが、ワン自身は、単独でメガホンを取った続編『ガイバー/ダークヒーロー』（1994年）により強い思い入れがあると語っています。そして1992年の『モンスター・パニック/アドベンチャー・オブ・カンフー・ラスカル』が、彼にとって初の単独監督作品となりました。

監督としての代表作としては、『ガイバー/ダークヒーロー』や、日本のアクション監督・坂本浩一とタッグを組んだ『破壊王 DRIVE』（1997年）などが挙げられます。『破壊王 DRIVE』は、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭やファンタジア映画祭で受賞するなど高い評価を得ました。坂本浩一とは深い親交があり、ワンの監督作品には坂本率いるスタントチーム「アルファスタント」がほぼ全て参加しており、その連携から生まれるダイナミックなアクションシーンは彼の作品の大きな魅力の一つとなっています。

ワンはまた、日本の特撮番組、特に『ウルトラマン』や『仮面ライダー』シリーズ、そして香港のカンフー映画、例えば『片腕カンフー対空とぶギロチン』などから強い影響を受けていることを公言しています。これらのアジアのアクションや怪獣特撮の要素は、彼の作品におけるクリーチャーデザインやアクション演出にも色濃く反映されています。

過去には俳優としていくつかの作品に出演した経験もありますが、「演技は好きではない」と述べており、あくまで造形や監督業が本職であることを強調しています。

現在は、バイオモーフ社（Biomimetic Engineering Research & Optics Fabrication）のCEO兼ヘッドアートディレクター、そしてアライアンス・スタジオの共同設立者として、特殊効果や造形の分野でリーダーシップを発揮しながら活動を続けています。長年にわたりSFXアーティスト、造形作家、映画監督という多角的な視点から映画制作に関わり、その才能と経験はハリウッドの特殊効果業界において重要な位置を占めています。

主な参加作品 (抜粋):

SFX/造形:
『スペースインベーダー』 (1986) - クリーチャー造形
『プレデター』 (1987) - コンセプトアート
『死霊のはらわたII』 (1987) - 造形
『ビートルジュース』 (1988) - 造形
『グレムリン2 新・種・誕・生』 (1990) - 特殊効果スーパーバイザー
『メン・イン・ブラック』 (1997) - クリーチャーデザイン
『PLANET OF THE APES/猿の惑星|PLANET OF THE APES_猿の惑星』 (2001) - 造形、デザイン
『ヘルボーイ』 (2004) - アートスーパーバイザー
『AVP2 エイリアンズVS.プレデター』 (2006) - クリーチャー造形

監督:
『GUYVER』 (1990) - 監督 (共同)
『モンスター・パニック/アドベンチャー・オブ・カンフー・ラスカル』 (1992) - 監督 (単独)
『ガイバー/ダークヒーロー』 (1994) - 監督
『破壊王 DRIVE』 (1997) - 監督
『KAMEN RIDER DRAGON KNIGHT』 (TVシリーズ, 2008) - 監督、共同製作総指揮他

主な受賞:

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 1997年南俊子賞（『破壊王 DRIVE』）
ファンタジア映画祭 1998年インターナショナル映画賞（『破壊王 DRIVE』）

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