ズミ

スミ：日本の山野に咲く小さなリンゴの仲間

ズミ（学名: Malus toringo）は、バラ科リンゴ属に属する落葉小高木から高木です。リンゴの近縁種であり、その野生種として知られています。高さは最大で約10メートルに達し、枝はよく分枝して横に広がる樹形となります。樹皮は灰褐色で、縦に細かく裂けて剥がれるのが特徴です。若い枝は赤褐色で、皮目は小さく目立ちません。

和名と別名

和名の「ズミ」の由来は諸説ありますが、樹皮から染料が採れることから「染み」、あるいは酸っぱい実をつけることから「酢実」という説が有力です。 また、花や実がカイドウやリンゴ、ナシなどに似ていることから、ヒメカイドウ、ミツバカイドウ、ミヤマカイドウ、コリンゴ、コナシ、サナシといった様々な別名でも呼ばれています。ただし、サナシという名称は地域によって異なる植物を指す場合もあるため、注意が必要です。中国名では「三葉海棠」と呼ばれています。

分布と生育環境

ズミは、主に日本（北海道、本州、四国、九州）と朝鮮半島に分布しています。日当たりの良い山地や山野に自生しており、比較的乾燥した環境を好みます。

形態

ズミの葉は、長楕円形から卵状長楕円形で、長さは3～8センチ[[メートル]]ほどです。枝先に付く葉はやや小さく、枝から伸びる葉は時に3～5裂することもあります。葉の縁には細かいギザギザ（鋸歯）があります。

花期は5～6月で、直径2～3.5センチ[[メートル]]の白色または淡紅色の花を3～7個、散房状に咲かせます。花弁は5枚、雄しべは20本あります。

果期は9～11月で、直径6～10ミリ[[メートル]]の小さな球形の果実をつけます。果実は秋に赤く熟し、落葉後も冬の間枝に残っていることが多いため、野鳥などにとって重要な食料源となります。この実は食用となり、生食も可能ですが、酸味が強いのが特徴です。

冬芽は枝先に仮頂芽、枝に側芽が互生し、それぞれ3～4枚の芽鱗に覆われています。葉痕は三角形やV字形で、維管束痕が3個確認できます。

利用

ズミは古くから様々な用途で利用されてきました。樹皮は煮出すことで黄色の染料が得られ、これは和名の語源の一つとも考えられています。また、明礬などを加えることで絵の具としても利用されました。

木材は緻密で堅いため、家具や細工物などの材料として用いられてきました。果実は果実酒に加工され、独特の風味を持つお酒として楽しまれています。

近年では、リンゴの台木としての利用も注目されています。以前はズミの種から育てたものが用いられていましたが、現在ではリンゴと同じ真正リンゴ区に属するマルバカイドウなどが主に用いられています。

保全状況

ズミは比較的広範囲に分布し、個体数も多いことから、現状では絶滅危惧種に指定されていません。しかし、森林伐採や開発などによる生息地の減少は、ズミの生育にも影響を与えている可能性があります。

まとめ

ズミは、その美しい花と赤い実、そして様々な用途を持つ魅力的な植物です。日本の山野で出会う機会があれば、ぜひその姿を観察してみてください。 その控えめながらも存在感のある姿は、日本の自然を象徴する植物の一つと言えるでしょう。

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