セキグチ

株式会社セキグチは、日本の玩具メーカーとして、特に人形やぬいぐるみといったキャラクター商品の分野で広く知られています。代表的な製品は、世界中で愛される「モンチッチ」です。本社は東京都葛飾区西新小岩に構えており、1世紀を超える長い歴史を持っています。

沿革

セキグチの歴史は、1918年4月に東京府南葛飾郡奥戸村（現在の葛飾区西新小岩）に設立された関口セルロイド加工所に始まります。創業当初はセルロイド人形の製造を行っていましたが、第一次世界大戦後のセルロイド業界の不振を受け、1932年には主要素材をベークライトへと転換しました。その後、1943年6月に関口加工株式会社として改組。戦後の技術革新にも積極的に取り組み、1954年にはソフトビニールの技術を完成させ、製品化に成功しました。

1960年代後半からはオリジナルの人形開発が活発化し、1969年に「ポッポちゃん」、1972年には「くたくたシリーズ」、そして1973年にはわたなべ緑デザインによる「マドモアゼル ジェジェ」といったヒット商品を生み出しました。そして、1974年1月26日には、同社を代表する存在となる「モンチッチ」人形が誕生。この成功を受けて、1976年7月には現在の商号である株式会社セキグチへと変更しました。

その後も革新は続き、1982年にはぬいぐるみや人形にオルゴール機能を搭載した商品の販売を開始。特に1984年6月には、世界で初めて電着植毛技術を用いたフロッキー人形を開発・発売するなど、常に新しい技術への挑戦を続けています。近年の主な展開としては、2004年10月にモンチッチの妹分として「ベビチッチ」が登場。モンチッチ誕生40周年を迎えた2014年からは記念プロジェクトが始動し、新世代モンチッチの開発などが進められました。

地域社会との連携も深く、2016年4月にはかつて本社近くにあったセキグチドールハウスの跡地に、災害時対応型の「モンチッチ公園」（正式名称は西新小岩五丁目公園）が開園。さらに2022年1月には、葛飾区と協力してJR新小岩駅北口駅前広場にモンチッチの銅像を建立するなど、地域に根差した活動も行っています。

事業内容

セキグチが手掛ける製品は、自社オリジナルのキャラクター商品と、国内外の人気キャラクターのライセンス商品の二本柱で構成されています。オリジナルキャラクターとしては、「モンチッチ」「ベビチッチ」を中心に、「ChamChamBear」や人体（女性）型の着せ替え人形「Momoko」などを展開しています。ライセンスキャラクターでは、以下のような幅広いキャラクターの商品を企画・製造・販売しています。

スヌーピー（ピーナッツ）
ディック・ブルーナ（ミッフィー他）
シナモロール（サンリオ）
くまのがっこう（バンダイ）
ドラえもん
バーバパパ
ピングー
いないいないばあっ!（NHK）
ワンワン
うーたん
ノンタン
その他

その他

セキグチ本社近くには、かつて「セキグチドールハウス」という施設が存在しました。これは、大正時代から戦後にかけて製造されたセルロイド製の人形（キューピーなど）や玩具を展示・公開する施設で、元々はセルロイド倉庫を改装した建物であり、葛飾区の登録有形民俗文化財にも登録されていました。葛飾区はかつてセルロイド産業が盛んな地域でした。ドールハウスは閉鎖されましたが、その跡地は区が取得し、2016年に「モンチッチ公園」として整備されました。公園内にはセキグチドールハウスの表札がモニュメントとして飾られ、その歴史を伝えています。

技術開発の面では、1984年に発売されたフロッキー人形が特筆されます。この人形は、約1982年頃から商品企画が開始され、1985年春からの本格的なシリーズ展開でファンシーショップなどで人気を集めました。しかし、同時期に参入したエポック社のシルバニアファミリーが爆発的なヒットとなり、セキグチのフロッキー人形はシェアを奪われることとなりましたが、約5年間製造・販売が続けられました。

ユニークな企業文化として、本社での朝礼ではモンチッチの着ぐるみ（男の子と女の子）が登場し、社員と共にラジオ体操を行っています。また、バービー人形コレクターでセキグチミュージアム代表の関口泰宏氏は、セキグチ社社長の遠戚にあたるとされています。

セキグチは、伝統を守りつつも常に新しい挑戦を続け、技術開発と多様なキャラクター展開を通じて、日本の人形・ぬいぐるみ文化において重要な役割を果たしてきました。その歴史と製品は、今も多くの人々に夢と喜びを与え続けています。

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